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陽光輝く海原と桜満開の伊豆半島 -国立公園 人と自然(10) 富士箱根伊豆国立公園(追補) [   国立公園 人と自然]

 3月の末に、久しぶりに伊豆に行ってきた。環境行政学会という会合のついでに半島をドライブした。陽光輝く海原の先には、前日の寒波で雪をかぶった大島が浮かぶ。山々は芽吹きはじめ、オオシマザクラの白い花色が斜面に彩りを添えていた。伊豆は桜餅などに使用する桜葉塩漬の産地としても有名だ。西伊豆の松崎町では、摘みやすいように低く仕立てたオオシマザクラの樹園があり、全国の桜葉塩漬け生産量の70%を占めるという。もっとも、最近では桜餅にもプラスチック製の葉が使用されたりするが。春爛漫の伊豆のドライブ中、いつの間にか「岬めぐり」(山本コウタローとウイークエンド)を口ずさんでしまうといえば、年代もわかってしまうだろう。このブログではプロフィールも既に明らかにしているが。

 s-奥石廊3058.jpg伊豆半島は前回の連載ブログ「国立公園 人と自然(10)富士箱根伊豆国立公園 -世界のフジヤマ、天下の険 箱根、そして踊子の伊豆」で記したとおり、1955年に富士箱根国立公園に編入された。半島全域が国立公園と思っている方も多いかもしれない。しかし実際の公園指定地域は、海岸自動車道路沿いあるいは岬の展望台などと、そこから見える海岸や岩礁など比較的限られている。日本の国立公園は景観保護が目的だといわれる由縁でもある(ブログ記事「日本の国立公園は自然保護地域ではない? -多様な保護地域の分類」参照)。一方、天城の山中は主として稜線を中心に指定されてきたたため、伊豆スカイラインなどその後の道路建設により、稜線から外れた道路沿いは公園外ともなっている。いずれにしろ、数本の紐のいわば組み紐のような伊豆半島の国立公園区域の中で、満開の桜並木が続き大勢の人が訪れていた伊豆高原駅から大室山にかけての別荘地帯は、城ケ崎の海岸地帯とともに比較的国立公園の地域が広がっている地域だ。伊豆半島の組み紐のような国立公園区域は極端な例だが、面的な公園でも、保護計画という区域指定をよく見てみると、規制の比較的厳しいのは道路沿いだけで、沿線から外れた部分は規制の緩やかなことも多い。最近では、生態系・生物多様性保全の観点から、自然公園法も改正になり、こうした公園計画も徐々に変更されてきている。

 s-伊豆高原3066.jpg伊豆半島には、毎年首都圏から多くの人が訪れる。だが、その形態や目的はずいぶん変わってきた。かつては熱海や伊東などの大温泉地に、修学旅行や職場の団体観光客などが大挙して押し寄せた。旅館ホテルも、もっぱら団体客向けの部屋の造作と宴会などの接客サービスに特化してきた。そして最近では、小グループや熟年夫婦の旅行客が多くを占め、伊豆高原をはじめ各地に点在するミュージアムやレストランを求めて訪れるようになってきた。それにつれて、宿泊施設もペンションなど小規模のものも増え、部屋の間取りも少人数用に対応せざるをえなくなってきた。しかし、いつの時代でも変わらないのは、日本人を惹き付けてやまない温泉の魅力だ。伊豆半島には、温泉以外にも、海岸や天城山中などの自然と鄙びた生活やナマコ壁建物などの伝統的文化がまだまだ残っている。おしゃれなミュージアムもよいが、国立公園ならではの自然と文化を味わいたいものだ。


 (写真上)南伊豆の海岸景観(奥石廊にて)
 (写真下)大勢の観光客でにぎわう桜並木(伊豆高原にて)

 (関連ブログ記事)「国立公園 人と自然(10)富士箱根伊豆国立公園 -世界のフジヤマ、天下の険 箱根、そして踊子の伊豆」、 「日本の国立公園は自然保護地域ではない? -多様な保護地域の分類」、 「意外と遅い?国立公園の誕生 -近代保護地域制度誕生の歴史

(2010.6.4 タイトルおよびカテゴリー変更)


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