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コーヒーを飲みながら 熱帯林とコーヒーを考える [生物多様性]

 近くの海岸までの散歩から戻り、ゆっくりとコーヒーを飲んでいるところだ。以前のこのブログで、スマトラの熱帯林が違法伐採されて、コーヒープランテーションとなっていることを報告した(「そのおいしいコーヒーはどこから?」)。

 スマトラ島の南ブキット・バリサン(Bkit Barisan Selatan)国立公園は、トラ、サイ、ゾウなどの希少な野生動物も生息することから「世界遺産」にも指定されているバリサン山脈の一部だ。しかし、公園内を貫通する国道から一歩森林内に入ると、違法侵入者たち(エンクローチメント)により原生林が伐採されて、コーヒーのプランテーション(農園)となっている。かつての原生林の面影を残す太い切り株もある見渡す限りの伐採跡には、細々としたコーヒーの苗が植えられている。(伐採後の光景は、上記ブログ記事を参照されたい)

 s-ロブスタコーヒー00230.jpgコーヒーは、通常は半日陰で栽培されている。しかし、樹木を選択して伐採するのは手間がかかるし、シェード(緑陰樹)の植栽や後片付けも大変だ。そこで手っ取り早い方法として、皆伐して焼き払い、そこに苗を植えることになる。

 私とランプン国立大学の共同研究で衛星画像を解析して森林の減少率を調べたところ、1973年には国立公園の88.6%を覆っていた原生林が、1997年には76.2%に、さらに5年後の2002年に56.5%に、2008年には半分以下の49.2%にまで急激に減少してしまったことが判明した。

 このようにして原生林が減少し続け、これ以上の原生林の減少が続けば、そこに生息する貴重な動物の存続にも赤信号がともる事態になってしまった。2011年には、ついに世界遺産は「危機遺産」として登録されることになってしまった。

 ここで栽培されているロブスタ(Robusta)種は、日射や病害虫にも強く、比較的栽培が容易でもある。しかし、違法でもあり、粗放栽培のため品質も劣ることから、当然価格も安く買いたたかれる。それでも、違法侵入の住民にとっては、貴重な現金収入だ。WWFインドネシアによれば、これらのコーヒー豆は、合法的なコーヒー豆と混ぜられて世界50カ国以上に輸出され、世界的なメーカーのインスタントコーヒーやスーパーで売られているパッケージ入りのブレンドコーヒーなどの原料ともなっているという。要するに増量のためだろう。日本は、米国やドイツなどとともに、このコーヒー豆の輸入大国の一つだというから、私たちが口にしているコーヒーにも、このコーヒー豆が含まれているかもしれない。

 s-認証マーク.jpgこうした熱帯生物多様性の保全や地域社会の安定などの観点から製品をチェックし、「フェアトレード」や「レインフォレスト・アライアンス」などの認証を受けたコーヒー豆も出回るようになってきた。日本の大手コーヒーメーカーやコーヒーチェーンでも、積極的にこれらの認証コーヒー豆を扱う取り組みが増えてきた。

 日曜日には、安心して、コーヒーをゆっくりと味わいたいものだ。

 (写真上)原生林の伐採跡地のコーヒー豆(南ブキット・バリサン国立公園にて)
 (写真下)認証マーク(左:フェアトレード、右:レインフォレスト・アライアンス)
 (いずれも、各WEBより:フェアトレード情報室http://www.fair-t.info/ft-label/label1.html;レインフォレスト・アライアンスhttp://www.rainforest-alliance.org/ja/certification-verification

 (関連ブログ記事)
 「そのおいしいコーヒーはどこから? -スマトラ島の国立公園調査
 「そのエビはどこから? -スマトラ島のマングローブ林から(2)
 「アルバニアのんびりカフェ
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コメント 1

mimimomo

こんばんは^^
うちで飲んでいるのにも入っているかしら~
by mimimomo (2012-07-22 18:46) 

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