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アラン諸島の旅 [日記・雑感]

 先日(7月26日)のNHKテレビ(BSプレミアム)で、糸井重里さんがアイルランドのアラン諸島をめぐる「旅のチカラ」という番組をやっていた。震災復興のために編み物産業を育成している糸井さんが、そのヒントを求めての旅だ。

 s-アラン諸島0949.jpgアラン諸島とは、アイルランドの西、ゴールウェイ沖に浮かぶイニシュモア島、イニシュマン島、イニシィア島の3島をいう。断崖絶壁に囲まれた小さな島々で、全島が石灰岩の岩盤だ。イニシュモア島の断崖では、観光客が恐る恐る身を乗り出して眼下の波頭砕ける光景を見下ろしていた。

 アラン諸島は石灰岩でできていて、土壌が薄いために耕作はほとんどできない土地だ。掘っても掘っても、岩しか出てこない。住民たちは、その掘り出した岩を丹念に風よけに積み上げて、耕作地や放牧地を造成していった。落ち葉などの腐葉土の代わりに、海岸で拾い上げた海藻をすき込んで土壌にした。

 s-アラン諸島0932.jpg番組では、伝統的なセーターのアラン編みも、根気を詰めての手編みをする職人がいなくなってきたと報じていた。1着完成するまでに、200時間もかかるらしい。アラン編みセーターは、島の漁師たちが厳しい冬の漁に出るときに着用したもので、そこからフィッシャーマンズセーターとも呼ばれている。この手編みのセーターを着用した漁師は、万が一水難したときにもその編模様で身元が分かったということを以前聞いたことがあった。家の家紋みたいなものだと思っていた。番組に登場した地元の編み手によると、もともとは編み手の母親が自分の好きな柄、編みやすい柄を編んでいたのが、いつしかその家の伝統の編み柄になったということらしい。

 ケルトの伝統も次第に薄れていく現代だ。アラン諸島でも、廃墟となった昔の農家の建物が目につく。便利になったとはいえ、強風が吹きすさび、土さえない土地での生活はきっと厳しいに違いない。私が訪れた8月の花々が咲き乱れる天国のような光景からは、想像だにできない。

 s-アラン諸島0980.jpg東日本大震災の被災者の皆さんの生活も、想像の域を超えることだろうが、一刻も早く復興することをただただ祈っている。手作りの暖かさ、人とのつながりを大事にしたい。

 (写真上)断崖から覗き込む観光客(イニシュモア島にて)
 (写真中)石を積み上げた農地の囲い(イニシュモア島にて)
 (写真下)咲き乱れるヤナギランとヒース(イニシュモア島にて)

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