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森の征服 ギルガメッシュ展 [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

古代オリエント博物館(東京・池袋)の特別展「ギルガメッシュと古代オリエントの英雄たち」を先月末にみてきた。

特別展入口のディスプレイ。

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写真撮影はここまで。

文字による人類最古の物語といわれる「ギルガメッシュ叙事詩」は、紀元前2600年頃の南部メソポタミアにあった都市国家ウルク(現在のイラク内)の実在の王ギルガメッシュと森の神フンババの争いの物語だ。

ウルクは、世界最古の都市国家であり、世界最古の文字・楔形文字を発明した都市国家でもある。

ほかにも、高度な文明を誇ったであろうことは、数々の出土品から想像できる。
撮影可能なコレクション展(常設展)には、ギルガメッシュ叙事詩と同時代頃の古代オリエント、シリアの発掘物などが展示されている。

紀元前2500年前後には、車輪を備えた幌車両や牛車も使用されていた。
写真の左は、シリア北部から出土した土製の四輪車模型。
写真の右は、トルコで出土した銅製牛車模型。

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古代アッシリア王国時代(紀元前2000~1600年)には、美しい幾何学文様の彩文土器も作成された。

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ギルガメッシュ叙事詩は、そのウルク遺跡から出土した楔形文字で刻まれた全十二書板の粘土板に刻まれている。


ギルガメッシュ大王と森の神フンババの争いは、この第五書板に記されているのだ。

森の神フンババは、青銅の手斧を手にしたギルガメッシュ大王に敗れ、森を手放した。
そして、王はこの香柏(レバノンスギ)の森を伐採した。

これは、人類がその暮らしのために森を開発し、その支配者となったことを象徴的に示している。

物語の舞台となった現在のレバノン地方には、鬱蒼としたレバノンスギの森が広がっていたことが花粉分析などで明らかになっているが、現在ではその面影もない。

かつて文明と人々の豊かな生活を支えたレバノンスギの森は、今ではわずかに残存するのみで、「カディーシャ渓谷と神の杉の森」として世界遺産に登録されている(1998年)。

そして、かつての豊かさの象徴としてレバノン国旗の中央に描かれている。

s-レバノン国旗.jpg
Webより借用

人類による森林破壊と森の神々との争いの物語は、アニメ映画「もののけ姫」にも通じるところがあり、世界共通だ。


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