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巨木の郷 青森県階上町の巨樹 [巨樹・巨木]

青森県の南部、八戸市に隣接する階上町。
町内には、多数の巨樹が存在している。

全国的には、巨樹は社寺境内や山奥が多いが、ここでは民家の庭に生育しているのだ。
町内有志は「階上売り込み隊」を結成して、巨木・古木の調査とパンフレット作製、巨木巡りなどを実施している。

町でもこれを支援し、「巨木の郷」として町興しを図っている。
町内には、巨木巡りのコースがいくつも設定されており、コース案内の道標と案内板も整備されている。

9月初旬、そのいくつかを見学してきたので紹介しよう。


町役場に近い天当平地区には、樹齢250年という放射状に枝分かれした「天当平のアカマツ」がある。(幹周3.73m、樹高22.20m)

その枝先は特に赤く、燃え上がる炎のようだということで、「火炎の松」とも名付けられている。
また、その容姿から「うつくし松」とも呼ばれている。

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枝が三叉に分かれる三頭木は、神が宿る山ノ神として崇められ、伐採からも免れてきた。
根元には、小さな祠が祀られている。

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「茨島のトチノキ」は、地元の旧家、茨島家の敷地内に生育している。
推定樹齢850年というその巨樹は、青森県天然記念物に指定されている。

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見学時には、枝先に無数の栃の実をつけていた。

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樹高28.5m、県内最大級という6.98mの幹周から長く伸びた枝は、まるで何匹もの大蛇のようだ。

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最大級といえば、「柳沢家のアサダ」は、幹周4.3mで国内でアサダの幹周としては第2位にランクされている(樹高は22.0m、樹齢は不明)。

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幹に空いた穴からは、どんな生きものが顔を出すのだろうか。
想像を掻き立てられる。

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町の天然記念物に指定されている幹周6.4mの「平野家のサイカチ」も、サイカチとしては国内最大級という。

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樹齢800年という主幹は残念ながら朽ちているが、朽ち果てつつある主幹を支えるように、その両側から新しい幹が伸びている。

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この地域の旧家で、代々久五郎を名乗る平野家の庭先で守られてきた。
マメ科巨樹の実(さや)は、昔から広く洗剤代わりに使用され、現在でも漆器用の洗剤として使用されているという。


町民に愛され、共に生活してきた巨樹たち。
その巨樹たちは、町興しという形で、町民に誇りと希望をお返ししようとしているようだ。

来月(10月19~20日)には、福岡県宇美町で巨木フォーラムが開催される。

ここでも、巨樹と人々とのドラマが待ち受けていることだろう。楽しみだ。

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森の征服 ギルガメッシュ展 [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

古代オリエント博物館(東京・池袋)の特別展「ギルガメッシュと古代オリエントの英雄たち」を先月末にみてきた。

特別展入口のディスプレイ。

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写真撮影はここまで。

文字による人類最古の物語といわれる「ギルガメッシュ叙事詩」は、紀元前2600年頃の南部メソポタミアにあった都市国家ウルク(現在のイラク内)の実在の王ギルガメッシュと森の神フンババの争いの物語だ。

ウルクは、世界最古の都市国家であり、世界最古の文字・楔形文字を発明した都市国家でもある。

ほかにも、高度な文明を誇ったであろうことは、数々の出土品から想像できる。
撮影可能なコレクション展(常設展)には、ギルガメッシュ叙事詩と同時代頃の古代オリエント、シリアの発掘物などが展示されている。

紀元前2500年前後には、車輪を備えた幌車両や牛車も使用されていた。
写真の左は、シリア北部から出土した土製の四輪車模型。
写真の右は、トルコで出土した銅製牛車模型。

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古代アッシリア王国時代(紀元前2000~1600年)には、美しい幾何学文様の彩文土器も作成された。

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ギルガメッシュ叙事詩は、そのウルク遺跡から出土した楔形文字で刻まれた全十二書板の粘土板に刻まれている。


ギルガメッシュ大王と森の神フンババの争いは、この第五書板に記されているのだ。

森の神フンババは、青銅の手斧を手にしたギルガメッシュ大王に敗れ、森を手放した。
そして、王はこの香柏(レバノンスギ)の森を伐採した。

これは、人類がその暮らしのために森を開発し、その支配者となったことを象徴的に示している。

物語の舞台となった現在のレバノン地方には、鬱蒼としたレバノンスギの森が広がっていたことが花粉分析などで明らかになっているが、現在ではその面影もない。

かつて文明と人々の豊かな生活を支えたレバノンスギの森は、今ではわずかに残存するのみで、「カディーシャ渓谷と神の杉の森」として世界遺産に登録されている(1998年)。

そして、かつての豊かさの象徴としてレバノン国旗の中央に描かれている。

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Webより借用

人類による森林破壊と森の神々との争いの物語は、アニメ映画「もののけ姫」にも通じるところがあり、世界共通だ。


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