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水害復興と修験修行の支え 一木で森を成す福岡の巨樹たち(2) [巨樹・巨木]

前回記事で紹介した「一木で森を成す」が如くの巨樹、「湯葢の森」と「衣掛の森」のほかにも、この2本の巨樹のすぐ近くに「森」のつく巨樹がある。

それが、「隠家(かくれが)の森」(幹周18.0m)だ。
これも、国の天然記念物に指定されているクスノキだ。

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筑後川流域で水が豊かな「三連水車」の里として知られる朝倉市は、2017年7月と2018年7月の二年連続の豪雨により被害を受けた。
写真は、道の駅「三連水車の里あさくら」にある実物大の三連水車モニュメント。

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隠家の森は、この朝倉市にあり、地上3mほどで3本に分かれていたが、1991年の台風で大枝が折れて現在の形となった。

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幹の内部には8畳ほどの空洞があり、関所を通れない人が夜になるまで隠れていたことから、隠家の森と呼ばれるようになったという。

その隠家の森の根元には「田神社」が祀られている。

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訪問の日はちょうど恵蘇八幡宮のご神幸祭で、ここに御旅所を設置する準備中だった。

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恵蘇八幡宮にも、県天然記念物に指定されている「恵蘇八幡のクス」(幹周9m)がある。

周辺には、ほかにも安長寺境内の「安長寺の大クス」(幹周12m、県天然記念物)や須賀神社境内の「祇園の大クス」(幹周10.8m、県天然記念物)など、多くの巨樹がある。

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これら朝倉市内の巨樹は、大水害にめげず、その復興に励む人々を包み込むように見守っている。

巨樹も、太さ(幹周)で比べるとクスノキが圧倒的に多くなる。
前回記事でも記したとおり、クスノキは、日本一の「蒲生の大クス」(幹周24.2m)をはじめ、トップ10の半数以上を占める巨樹になる樹種だ。

今回巡った巨樹には、クスノキのほかにスギがあった。

焼き物で有名な小石原の「行者杉」は、修験の聖地・英彦山に峰入りする修験者たちが植栽したと伝えられる樹齢200年から600年の杉林だ。

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スギ林から突出してフォークのような株立ちの幹を表している(↑写真)のは、「霊験杉」。

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行者杉の中で最大とされるのは、推定樹齢600年の「大王スギ」(幹周8.29m)だ。

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一木で森を形成するようなクスノキの巨樹。
そして、修験者たちが修行の成就を祈って植栽したであろう行者杉の森。

福岡の巨樹たちは、人々の生活を見守り続けている。


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宇美八幡宮は巨樹の森 一木で森を成す福岡の巨樹たち(1) [巨樹・巨木]

第32回巨木を語ろう全国フォーラム(2019年10月19日、福岡県宇美町)(前回記事「巨木の下での全国フォーラム 今年は福岡・宇美大会2019」)の翌日は、恒例の巨樹探訪エクスカーション。

まずは、フォーラム開催地の宇美町にある宇美八幡宮の巨樹。
前回記事でも紹介したとおり、宇美町は神功皇后が朝鮮半島出兵(三韓征伐)の帰路、応神天皇を出産した地とされる。

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町名もこの故事にちなんでいるが、神社も安産信仰「子安の杜」として知られている。
境内末社「湯方社」の周囲には、安産のお礼に子どもの名前などを記入した玉石が積み上げられている。

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また、神功皇后が木の枝に取りすがって応神天皇を出産したと伝えられる社殿脇のエンジュの木は、「宇美宮の槐(えんじゅ)」として代々更新されてきた。

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宇美八幡宮境内の二本の国指定天然記念物のクスノキの巨樹も、これらの出産にまつわる伝承を受け継いでいる。

社殿右手の「湯葢(ゆぶた)の森」(幹周15.7m)は、この木の下で産湯を使った際に、枝葉が覆いかぶさって蓋の役割をしたと伝えられる巨樹だ。

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根元に6畳ほどの空洞があるというその太さには、圧倒される。

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社殿の左手奥にある「衣掛(きぬかけ)の森」(幹周20.0m)は、出産の際に産衣を掛けたとされ、樹齢は千年とも二千年ともいわれている。

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さすがに寄る年波には勝てずに弱ってきたが、2002年には大治療がなされ、樹勢は回復してきている。

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この二本のほかにも、境内には多くのクスノキの巨樹が生育し、「蚊田(かだ)の森」として県天然記念物に指定されている。

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クスノキは、日本一の「蒲生の大クス」(幹周24.2m)をはじめ、トップ10の半数以上を占める巨樹になる樹種だ。
衣掛の森も、全国トップ10に名を連ねる。


衣掛の森も、湯葢の森も、全国巨樹・巨木林の会初代会長の里見信生・元金沢大学教授が作成した「巨樹見立番付」の樟(クスノキ)の部では、それぞれ東西の張出横綱となっている。

宇美八幡宮の湯葢の森や衣掛の森は、まさにその名のとおり「一木で森を成す」巨樹だ。
古くから信仰を集め、国の天然記念物に指定され、クスノキの中でも巨樹中の巨樹たちだ。



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巨木の下での全国フォーラム 今年は福岡・宇美大会2019 [巨樹・巨木]

全国持ち回りで毎年開催されている「巨木を語ろう 全国フォーラム」。
今年(2019年)の第32回フォーラムが、福岡県宇美町で10月19日午後に開催された。

宇美町は、神功皇后が朝鮮半島出兵(三韓征伐)の帰路、応神天皇を出産した地とされている。町名は、その故事の「産み」にちなみ、2020年には町制施行百周年を迎える。

出産の地とされる宇美八幡宮境内には、出産の際に産衣を掛けたとされる「衣掛(きぬかけ)の森」(幹周20.0m)と、産湯の蓋の役割をしたと伝えられる「湯葢(ゆぶた)の森」(幹周15.7m)という二本のクスノキの巨樹がそびえ立っており、共に国指定天然記念物となっている。

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境内の湯葢の森

会場の「宇美町立中央公民館」や周辺道路には、フォーラムの立て看板や幟旗も。

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会場入り口では、地元小学生が描いた衣掛の森などの巨木の絵と、地元会員などの巨樹写真が展示され、参加者は熱心に見ていた。

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フォーラムの開会に先立ち、宇美八幡宮の伝統神楽が披露された。

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フォーラム開始には、例年どおりの主催者挨拶などがあり、私も共催者の「全国巨樹・巨木林の会」会長として挨拶した。

その後は、基調講演、シンポジウムと続き、宇美町緑の少年団による大会宣言の朗読と採択があった。

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最後は、第1回から引き継がれてきた大会旗が、木原宇美町長から来年度開催の東京都三宅村の櫻田村長に引き継がれて、フォーラムは幕を閉じた。

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夕刻からは、場所を移しての交流会。
勇壮な宇美太鼓は、腹の底にまで響く。

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年1回の全国の仲間たちとの再会を会員たちは何よりも楽しみにしている。
そして、フォーラムを作り上げた地元の人々との交流も。

昆布漬明太子や本物の力士が作ったちゃんこ鍋など、地元の味自慢の料理と酒もまた交流会の楽しみのひとつだ。

翌日は、3コースに分かれてのエクスカーション。
どんな巨樹のドラマを見聞きすることができるか、楽しみだ。


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