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アジサイとシーボルト  そしてプラントハンターと植物園 [生物多様性]

関東地方にも、しばらく前に梅雨入り宣言があった。この季節というと、何といってもアジサイだ。ブログにもアジサイが花盛りだ。

わが家の庭にも、ごく普通のアジサイがあるが、株ごとに色が違う。

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土壌の酸性度によって色が変わると聞いているが、わが家の広くもない庭でそんなに酸性度が違うとも思えないけど。

一番好きな色は青。 「ヒマラヤの青いケシ」と同じだ。


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それぞれの色のアジサイだが、咲くにしたがって微妙に色が変わっていくところがまた良い。

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完全な青になる前の淡い青

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終期になるとやや紫がかってくる(右側部分)


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こちらは赤になる前

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花の中期?(奥)と盛り (手前)


そんなところから、花言葉は「移り気」とか。アジサイには可哀そう?

アジサイと言えば、シーボルトを思い出す。
シーボルトは、江戸時代末期に来日したドイツ人医師で、日本ではほとんどの人が名前を知っているくらいの有名人だ。

鎖国中の日本では、オランダ商館付医師として長崎出島に居住し、日本人に西洋医学を広めた。

長崎で出会った日本人女性「滝」を愛し、日本で採取した新種植物に「オタクサ」の名を付けた。

 

 

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シーボルト著『日本植物誌』(ちくま学芸文庫)(大場秀章 監修・解説)より

この植物こそ日本が原産の「アジサイ」であり、「オタクサ」は「お滝さん」から由来していると言われている。

シーボルトは、アジサイのほかにも多くの植物や動物を採取し、その標本をオランダなどに送っている。その標本類は、現在でもオランダの国立植物学博物館ライデン大学分館などに保存されている。

帰国後は、『日本植物誌』や『日本動物誌』を著して、日本の自然を広くヨーロッパに紹介した。自然だけではなく、伊能忠敬の日本地図を持ち出そうとしたシーボルト事件でも有名だ。

シーボルトの来日に先立つこと約130年前には、同じくドイツ人のケンペルが来日して、日本中を調査して『日本誌』を著し、特に多くの日本の植物をヨーロッパに紹介した。


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ケンペル(左)とバーニーの顕彰碑(元箱根にて)

シーボルトも、ケンペルも、そして両者の間に来日したツンベルク(ツェンベリー)(スウェーデン人)も、ともに医師であり、博物学者でもあった。

日本国内での移動は厳しく制限されていたが、商館長の江戸参府の際には書記とともに随行を認められた医師として、長崎から江戸までの旅をすることができた。

彼らは、途中の箱根などで多くの動植物を採集した。ハコネサンショウウオやハコネグサなど、彼らによって新種として命名されたものも多い。

このように、世界各地で植物を探検し、ヨーロッパに導入した人々を「プラントハンター」と呼ぶ。

もともとは、園芸ブームで希少品種を金に糸目もつけずに買い込むヨーロッパ貴婦人に、新大陸などの珍しい植物を売り込んで一攫千金を目論んだ人々の呼称だった。

日本原産のアジサイも、シーボルトらによってヨーロッパに持ち込まれ、その後品種改良されて園芸品種として逆輸入されているという。

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プラントハンターは、園芸植物だけではなく、その後は医薬品の原材料探索などにも関わり、生物多様性条約では遺伝資源の利用などの南北対立の源ともなった。

プラントハンターが採取した植物の中継・順化の基地となったのが植物園であり、イギリスの王立キュー植物園(キュー・ガーデン)はそのネットワークの中心だった。


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大温室パーム・ハウス(キュー植物園にて)

これらについては、別の機会に紹介しよう。

下記↓の拙著『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』(明石書店)では、シーボルトも含めたプラントハンターや植物園、さらに生物資源の伝播と南北対立などを紹介しています。

【本ブログ内関連記事】

青いケシの花に誘われて

生物資源と植民地 -COP10の背景と課題(1)

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生物資源をめぐる国際攻防 -コロンブスからバイテクまで

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mimimomo

こんにちは^^
昔のお金持ち(ここに書かれている貴婦人などもそうでしょうが)は後世にいろいろ貢献(?)していますね。
フラサバソウもフランス人の植物学者から付けられた名前だし。
by mimimomo (2015-06-14 10:52) 

staka

mimimomoさん
フラサバソウのこと知りませんでした。学者の名、それも二人だそうですね。ありがとうございます。
by staka (2015-06-14 19:48) 

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