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連載 国立公園 人と自然(序) 数少ない自慢、すべての国立公園訪問記 [   国立公園 人と自然]

 私は、かつて国立公園管理官(パークレンジャー)として勤務したことがある(「プロフィール」参照)。実際に国立公園の現場での勤務経験(公園内に居住)は、十和田(十和田八幡平国立公園)、阿寒湖(阿寒国立公園)、箱根(富士箱根伊豆国立公園)の3か所だけで、レンジャー仲間では少ない方だろう。それでも、現場での経験は、現在の私の研究活動の原資にもなっている。

 国立公園での生活は3か所だけだが、霞が関(環境省本省)での勤務の間に、国内はもちろん、海外でも数多くの国立公園・世界遺産など保護地域を訪れる機会を得た。わが国の国立公園は、現在29か所が指定されているが、そのすべてに、たとえ一瞬でも足を踏み入れたことがあるのは、私の数少ない自慢できることの一つと言ってもよい。s-国立公園配置図.jpg

 そこで、「国立公園 人と自然」と題して、29国立公園を順次紹介しようと思う。単なる国立公園の面積や自然の紹介ではなく、その公園の歴史や文化、あるいは国立公園と意外な結びつきのある人物などをできるだけ簡潔に、しかし魅力的に紹介していきたい。とは言っても、広大な公園全体をくまなく取り上げるわけにはいかない。私の興味ある地区に限定されることもある。また、前述のとおり必ずしも居住したわけでもなく、公園によっては通り一遍の紹介にとどまざるを得ないことを最初にお断りしておく。登場人物についても、生存者では差し支えある可能性もあり、歴史上の人物あるいはすでに故人となっている方を敬称を省略して取り上げさせていただくこととする。

 第1回として取り上げる予定は、私の初めての現場であった十和田八幡平国立公園だ。それはまた、東京の新宿(四谷)生まれ育ちの私にとって、生まれて初めて実家から離れての生活であり、新婚生活でもあった。それだけに仕事だけではなく、四季の移ろいを含め、私生活にも、多くの思い出がある。春の道路開通の八甲田雪の回廊から始まり、奥入瀬の新緑のトンネル、十和田湖湖水祭り、南北八甲田山のお花畑、有名な奥入瀬の紅葉、冬の住宅除雪作業など、その印象は未だに鮮明だ。

 その中でも不思議と頻繁に思い出されるのは、朝の目覚めだ。宿舎は、奥入瀬渓流沿いにあった。渓谷の夜明けは遅い。雨戸がなく、遮光カーテンもまだない時代では、遅い夜明けはそれなりに心地よかった。しかし、朝目覚めて今日は雨降りかと思うことが何度もあった。それは渓流の流れの音だった。渓流沿いでは3年間を過ごしたが、次の阿寒湖への転勤まで、たびたび「渓流の雨音」で目覚めることとなった。渓流の水音以外にも、キツツキ(アカゲラ)に起こされることもしばしばあった。外壁が板張りの宿舎で、そこにキツツキがやってきたのだ。林の中で、遠くから聞こえるキツツキのドラミングの音(キツツキが樹木をつついて、虫類をほじくりだす音)は、何やら軽やかだが、すぐ耳元となると話は違う。まさに、”ドラミング”なのだ。今となってはどれも、現場でしか体験できない懐かしい思い出だ。

 (図)国立公園の配置(環境省資料より作成)
 (関連ブログ)「プロフィール」「富士山の麓で国立公園について講演」「意外と遅い?国立公園の誕生」「『米国型国立公園』の誕生秘話」「日本の国立公園は自然保護地域ではない?


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