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武蔵野の雑木林と炭 [生物多様性]

 このところ急に朝晩の気温が下がり、昼間の時間が短くなってきたこともあり、肌寒さを感じる。こうなるとやはり、炬燵(こたつ)にでも入って食べるおでんや鍋物が恋しくなる。こういうと、歳がバレてしまう(いや、プロフィールで当の昔にバレているが)。なにしろ、最近ではおでんもコンビニで買うものらしいし、エアコンがあれば炬燵など必要がない。

 s-雑木林落ち葉かき0923.jpg私が子供の頃、我が家では炬燵ではなく、燃料に炭団(たどん)を用いた行火(あんか)なるものを使用していた。炬燵にしろ、行火にしろ、燃料は炭団や炭だ。炊事や暖房に、今のように石油や電気などが使用される前には、もっぱら薪や炭を使用していた。しかし最近では、“炭”を目にすることもめっきり少なくなった。最近でも、夏休みのキャンプでは、バーベキューなどで炭を用いることもあるかもしれない。しかし、茶道でも、湯を沸かすのに炭を使うことも少なくなってきた。炭を日常的に使用しているのはせいぜい、焼鳥屋などくらいだろう。通勤路の駅の近くにも、「備長炭使用の店」の看板を掲げた店があるが、看板が盗まれるせいか、夜の営業時間にならないと外には掲げないため、まだ写真を撮っていない。

 炭には、ウバメガシから生産した備長炭のほかにも、様々な木材が使用されてきた。竹炭もある。最近は燃料としてだけではなく、炭の多孔性を利用して、水質浄化や湿度調整にも利用されている。我が家でも、床下に調湿用の炭を入れている。

 s-クヌギ炭0621.jpgもっぱら燃料として使用されていた江戸時代、その薪や炭(薪炭)を江戸に供給していたのが「武蔵野の雑木林」だ。那須火山や富士山、浅間山、赤城山などの火山灰で構成された関東ローム層に厚く覆われた洪積台地では、昔から萱の草原が広がり、馬などを飼育していた。徳川家康の江戸入城以来、人口が増加すると食料と共に炊事の燃料も不足した。そこで、草原の武蔵野にクヌギやコナラを植林して、薪炭の生産地としたのだ。

 埼玉県東南部に位置する私の勤務する大学の敷地内や周辺にも、薪炭林の名残のクヌギやコナラの林が残っている。しかし、現代では薪炭供給の役割もなくなり、ヤブとなって荒れ果てている。そうなると、ゴミ捨て場になり、結局は伐採して駐車場にでもしてしまおうということになる。

 環境省などが策定した「生物多様性国家戦略2010」では、生物多様性の4つの危機の一つとして、生活様式の変化による身近な自然の変化や喪失を掲げている。雑木林の変化は、まさにこの危機の例だ。

 s-雑木林ゴミ捨て禁止看板0613.jpg巨樹も含め、我が国の多様な自然は人と自然との相互作用で成立してきたものが多い。これからも、自然との繋がりを大切にしていきたいものだ。建物が密集した都会では、煙や臭いを気にして炭を使って七輪でサンマを焼くことさえもできなくなってしまった。

 (写真上)雑木林で堆肥用に落ち葉かきをする近隣の農家の人(大学敷地内にて)
 (写真中)クヌギの炭(春日部市内の炭店にて)
 (写真下)荒れ果てた雑木林には、ゴミ捨て禁止の看板も(大学隣接の雑木林にて)

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