SSブログ

今年最後のインドネシア調査 [保護地域 -国立公園・世界遺産]

 今年も残すところ数日となったが、調査で滞在中のインドネシアから本日帰国(2011年12月29日ジャカルタ発、30日成田着)する。私はこの数年、地球温暖化の防止のための森林の減少や劣化を防止(REDD+)するための調査プロジェクトに参加している。今回の調査もこの一環で、森林保全のための国立公園管理(ガバナンス)と地域住民との関係などについて現地調査した。
 
 今回は主としてスマトラ南部のワイ・カンバス国立公園が対象だ。このブログでも、何度か取り上げたことがある、ゾウの訓練所などがある公園だ。インドネシアでは、所有者が明確でない森林は基本的には国有地となっている。したがって、森林地域に設定される国立公園も、基本的にはすべて国有地となっている。

 ワイ・カンバス公園では、かつての移住政策によりジャワ島などから人々が移住し、キャッサバ(シンコン)の畑などを開拓して生活していたことがある。しかし、そこはたまたま国立公園内だったことから、公園保護に支障があるということで、住民は公園外に強制退去させられた。

 s国立公園内墓地01225.jpg現在は、シンコン畑も少しずつ自然林に戻りつつあるが、墓地は退去するわけにはいかない。こちらでは土葬だ。そこで、墓地の部分は住民の利用も認める「特別ゾーン」としている。今回の調査は、これらの国立公園管理と地域社会との関係、そしてそのための国立公園管理計画などを調査しているものだ。

 インドネシアには、このほかにも、公園指定前から住民が居住していた地域が多数存在する国立公園や、住民の不法侵入により公園内の森林が伐採されてコーヒーなどのプランテーションが開拓されている公園などもある。法律上の制度、建前上の管理方針と、実態とのかい離も大きい。

 インドネシアでの調査も、今年はこれで3回目となった。大学の授業にできるだけ影響を及ぼさないよう、夏休みや春休みを利用している。今回も暮れの時期の調査となった。いよいよ明日は、寒くあわただしい暮れの日本だ。調査では、ガタガタ道を走り通しで、だいぶ身体にも響いた。若い頃はむしろ楽しかったくらいで、ずいぶん歳を感じてしまった。仕事も片付いた帰国までの寸暇、日本のような年末のあわただしさもないこの国で、まったりとした空気を思う存分吸っておこう。

 (写真)国立公園内の墓地(背後の草原はシンコン畑跡)(スマトラ島ワイ・カンバス国立公園)

 (関連ブログ記事)
 「ゾウの楽園の背後にあるもの -国立公園 人と自然(番外編1追補)ワイ・カンバス国立公園(インドネシア)
 「国立公園 人と自然(番外編1)ワイ・カンバス国立公園(インドネシア) -ゾウと人との共存を求めて
 「愛知ターゲットと保護地域 -保護地域の拡大になぜ対立するのか
 「アバター  先住民社会と保護地域
 「インドネシアから帰国 -時間は流れる
 「南スマトラ調査
 「国立公園 人と自然(番外編4)グデ・パンゴランゴ山国立公園(インドネシア) -インドネシアで最古の国立公園、周辺は別荘も多い避暑地
 「インドネシアで蚊の絶滅について考える -生物多様性の倫理学
 「インドネシア通信事情 -ブログ未更新言い訳
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0