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バーベキュー炭もマングローブから:マングローブの生活資源 -スマトラ島のマングローブ林から(3) [生物多様性]

 このところ急に朝晩の気温が下がり、昼間の時間が短くなってきたこともあり、肌寒さを感じる。こうなるとやはり、炬燵(こたつ)にでも入って食べるおでんや鍋物が恋しくなる。この書き出しで、先月には「雑木林と薪炭」のブログ記事をアップした。今では真冬の寒さで、ますます熱いものがほしくなる。

 ところで、前回の薪炭は日本の関東地方が舞台だったが、今度は熱帯のマングローブ林が舞台だ。

 s-マングローブ違法伐採0437.jpgマングローブ林が、津波の防止に役立ったり、エビを含む稚魚の成育の場となっていることは、このブログ記事ですでに紹介した(「津波とマングローブ林再生」「そのエビはどこから?」)。それ以外にも、マングローブは様々な形で地元の人の生活の役に立っている。特に、多くの生物資源を提供してきた。

 すぐに思いつくのは木材としての利用だろう。腐りにくいマングローブの木材は、船、桟橋、家屋などに利用されてきた。タンニンを含む樹皮は、製革(皮なめし)や染色にも利用された。さらに、発疹の治療薬、下痢止めや防腐剤などの伝統的医薬品としても利用されてきた。また、ニッパヤシなどは、屋根材や壁材として、あるいはその繊維を利用してカゴや漁網の材料ともなってきた。(ニッパヤシは、ふつうイメージするマングローブとは異なるが、潮間帯に生育する植物の総称をマングローブいうことからこれに含まれる。)

 こうした生物資源としての直接的利用の中で、今日でも大々的に利用されているのは燃料としての薪炭利用だろう。マングローブ林の生育する沿岸地域の集落、住民の中には、まだまだ貧しい生活を送る人々も多い。電気や石油などの燃料を手に入れることができない彼らには、マングローブが有力な燃料となる。

 s-マングローブ違法伐採0450.jpgそれだけではない、マングローブから生成された炭は、日本にも輸入され、バーベキューなど私たちの楽しみのために利用されている。今はシーズンオフだろうが、夏のシーズンともなるとホームセンターなどのアウトドア用品売り場には、レジャー用の木炭として、安いマングローブ炭がうず高く積まれる。

 エビの輸入による、いわば間接的なマングローブ林の破壊だけでなく、薪炭のための伐採による直接的な破壊にも、私たちは関与していることになる。私たち日本人のおいしい料理やレジャーといった、いわば豊かな生活は、遠く離れた熱帯地域のマングローブにも支えられているのだ。忘年会の炭火焼き魚や焼き鳥の炭は大丈夫かな?

 (写真上)燃料用に違法伐採されたマングローブ
      証拠品として警察の立ち入り禁止ベルトが張られている(インドネシア・スマトラ島にて)
 (写真下)マングローブの違法伐採跡(インドネシア・スマトラ島にて)

 (関連ブログ記事)
 「武蔵野の雑木林と炭
 「そのエビはどこから? -スマトラ島のマングローブ林から(2)
 「津波とマングローブ林再生 -スマトラ島のマングローブ林から(1)
 「生物資源と植民地 -COP10の背景と課題(1)
 「熱帯林の保全 それとも遺伝子組換え食品? -「生活の中の生物多様性」講演の反応
 「熱帯林の消滅 -野生生物の宝庫・ボルネオ島と日本
 「インドネシアの生物資源と生物多様性の保全
 「南スマトラ調査


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mimimomo

こんにちは^^
マングローブはわたくしが思う以上に色々利用されているのですね。
by mimimomo (2013-09-25 12:02) 

staka

mimimomoさん、私たちは知らないうちに自然のお世話になっているということでしょうね。
by staka (2013-09-25 15:29) 

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