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ユーカリに彩られた先住民アボリジニの伝説の地 ダーウィンも立ち寄った世界遺産 -国立公園 人と自然(海外編9)ブルー・マウンテンズ国立公園(オーストラリア) [   国立公園 人と自然]

 世界には多くの国立公園がある。これまでこのブログでは、『国立公園 人と自然』として、主に日本の国立公園を取り上げ、海外の国立公園は「番外編」として取り上げてきた。

 11月にオーストラリア・シドニーで開催された第6回世界国立公園会議を機に、海外の国立公園も「海外編」として積極的に取り上げようと思う。

 新装「海外編」の最初は、先日の世界国立公園会議の際に訪れた「ブルー・マウンテンズ(Blue Mountains)国立公園」だ。ただし、番号は先の番外編からの通し番号とする。

 ブルー・マウンテンズ国立公園は、シドニーの西方100㎞弱の所に標高約1000mの山塊が連なる地域で、オーストラリアで最も有名な国立公園の一つである。その名の由来は、この地を覆うユーカリの原生林から発せられるユーカリ・オイルによって、山が青色の霧に覆われるからだという。

 この地域は、隣接するカナングラー・ボイド(Kanangra-Boyd)国立公園、ウォレミー(Wollemi)国立公園などとともに、グレーター・ブルー・マウンテンズとして、2000年には世界遺産にも登録されている。世界遺産グレーター・ブルー・マウンテンズは、ブルー・マウンテンズ国立公園が属すケドゥンバ地域を含む4地域から成り、8つの自然保護地域が含まれる、約1万平方キロにわたる広大な地域である。

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ブルー・マウンテンズは台地状の広大な地形

 19世紀後半には、シドニーからも近いため、レクリエーションや保養のために、自然の景勝地であり、ユーカリの原生林もあるこの地を訪れる人も多かったが、国立公園として指定されたのは1959年9月のことだ。現在の面積は、267,954haである。

 保護地域としての歴史は、英国人によるオーストラリア入植後からの探検家による探索と、その後この地域のユーカリ原生林を守るために自然保護者たちが土地を取得したことなどが始まりだ。1836年には進化論で有名なチャールズ・ダーウィンもビーグル号での世界航海の途中でシドニーに寄港し、ウェントワース滝を訪れて、その景観に驚嘆している。

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ダーウィンも訪れたウェントワースの滝
強風のため、滝つぼに落ちる前に霧となって舞い上がる

 いわゆる白人(ヨーロッパ入植者)からみたこの地の歴史はこうなるが、もともとは先住民アボリジニと称される人々のなかのグンドゥングラ部族とダルグ部族の土地だった。現在では、国立公園を管理するニュー・サウス・ウェールズ州と先住民の人々との間で協定を結び、共同管理がなされてアボリジニの聖地でもある。

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アボリジニの聖地に足を踏み入れる前の儀式として、ユーカリを燃やした煙を浴びる

 中でも、観光客にもっとも有名な「スリー・シスターズ」の岩峰には、先住民の伝説がある。いくつかのバリエーションがあるがいずれも、美しい3姉妹を守るために一時的に魔法によって岩に変えられたが、その魔法をかけた人(3姉妹の父だったり、魔法使いだったりするが)が死んでしまい、元に戻ることができなくなってしまったというものだ。

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有名なスリー・シスターズの岩峰

 岩になっても多くの人々を魅了しているスリー・シスターズ。さぞかし美しい3姉妹だったのだろう。


 アボリジニの血をひくレンジャー(国立公園管理員)の解説

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長い葉は、殺菌作用があり、消毒や石鹸として用いられた

 
 野生の草花などを食料や薬、繊維などに使用する先住民などの伝統的知識。
先進国の企業などは、それにヒントを得て製品化して巨額の富を得ている。

 しかし、その伝統知識や自然資源を長い年月の間守ってきた人びとには見返りもない。

 そのため、生物多様性条約などでも先進国と途上国の対立が続いた。2010年に名古屋で開催された生物多様性条約COP10では、「名古屋議定書」として生物資源の利用と利益還元のルール(ABS)が決まった。(ブログ記事リンク「名古屋議定書採択で閉幕 COPの成果 -COP10の背景と課題(3)」など参照ください)

 そんな人間どもの争いには無頓着のように、ブルー・マウンテンズの雄大な景観は人々を魅了する。

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美しいピンクの花

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しかし実は食虫植物 (刺激して花が閉じるのを見せるレンジャー)

 

 ほかにも美しい花が・・・

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スリー・シスターズの岩峰を眺めるエコーポイント展望台などへの入口
カトゥーンバの町にあるブルー・マウンテンズ文化センター



【「国立公園 人と自然」(海外編)ブログ記事リンク】最新5編

 「オランウータンとの遭遇 エコツーリズム、リハビリ、ノアの方舟 -国立公園 人と自然(番外編8)グヌン・ルーサー国立公園(インドネシア)
 「噴火口に神をみる ご来光で賑わう聖なる山 -国立公園 人と自然(番外編7)ブロモ・テンゲル・スメル国立公園(インドネシア)
 「聖なる山、トレッキングの山 -国立公園 人と自然(番外編6)リンジャニ山国立公園(インドネシア)
 「ペリカンの棲む湿地と海水浴場の賑わい -国立公園 人と自然(番外編5) ディヴィアカ・カラヴァスタ国立公園(アルバニア)
 「ゾウの楽園の背後にあるもの -国立公園 人と自然(番外編1追補)ワイ・カンバス国立公園(インドネシア)


【「国立公園 人と自然」(国内編)ブログ記事リンク】最新5編

 「温泉と避暑リゾート、世界遺産 -国立公園 人と自然(20)日光国立公園
 「自然保護の原点 古くて新しい憧れの国立公園 -国立公園 人と自然(19)尾瀬国立公園
 「花の浮島、花の原野 最北の国立公園 -国立公園 人と自然(18)利尻礼文サロベツ国立公園
 「日本第二位の高峰とお花畑、自然保護と登山ブーム -国立公園 人と自然(17)南アルプス国立公園
 「首都圏で貴重なハイキングコースと国立公園名称変更騒動のゆくえ -国立公園 人と自然(16)秩父多摩甲斐国立公園


【その他、本ブログ内関連記事リンク】

 「第6回世界国立公園会議 inシドニー
 「アバター  先住民社会と保護地域

 「祝 富士山世界文化遺産登録 -世界遺産をおさらいする
  (世界遺産の解説と私が訪問した世界遺産一覧)

【著書のご案内】

生物多様性カバー (表).JPG 世界は自然保護でなぜ対立するのか。スパイスの大航海時代から遺伝子組換えの現代までを見据えて、生物多様性や保護地域と私たちの生活をわかりやすく解説。

 国立公園や世界遺産などの保護地域の拡大目標(愛知目標)で世界はなぜ対立するのか、先住民と国立公園管理(ガバナンス)のパラダイムシフトなども。

 本ブログ記事も多数掲載。豊富な写真は、すべて筆者の撮影。

 高橋進 著 『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』 明石書店刊 


 目次、概要などは、下記の本ブログ記事をご参照ください。

 「『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』出版2 ―第Ⅱ部 国立公園・自然保護地域をめぐる国際関係
   国立公園をめぐる先住民と支配者・管理者の対立など
 
 「 『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』出版 1
   生物資源をめぐる先進国と途上国の対立など

 

 


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コメント 4

mimimomo

こんにちは^^
雄大ですね~
スリーシスターズと言った感じの名前っていろんな国にありますね。
どこも国立公園のようなところで美しい。
先進国が搾取すると言うのは、それもまた、あちこちで起こっているみたい。
by mimimomo (2014-12-10 14:32) 

staka

mimimomoさんは世界あちこちの山などにも行かれたようですが、オーストラリア経験はいかがですか?
by staka (2014-12-11 09:26) 

旅爺さん

私はブルー・マウンテンズに行く途中で野生のコアラに出合いました。アボリジニの女性とは鼻と鼻のこすりあいの挨拶もしてきました。想い出一杯です。
by 旅爺さん (2014-12-22 18:04) 

staka

旅爺さん、すごいですね~!
私はそんな経験できませんでした。
by staka (2014-12-23 10:34) 

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