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ツバメと壁画の大洞窟 ― 国立公園 人と自然(海外編10) ニア国立公園(マレーシア) [   国立公園 人と自然]

今月(3月)に実施したマレーシアのサラワク州での国立公園調査(サラワク州クチンは猫の町!?)。
その中から、いくつかの公園を紹介する(実際の訪問とは、順不同)。

まず初めは「ニア(Niah)国立公園」。

ニア国立公園は、ボルネオ島の北西部を占めるマレーシアのサラワク州の北東部で、海岸から約16㎞内陸に位置する。サラワク北部の中心都市ミリから車で2時間弱の距離だ。

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国立公園入口ゲート

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国立公園管理事務所
(ここで入場料を支払う)

1974年に指定(官報告示1975年)され、公園面積は3,139haで、低地熱帯林と2千万年前に形成されたサンゴ礁が隆起した石灰岩の丘(標高400m)に覆われている。

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白い石灰岩露頭の切り立った崖

管理事務所から、すぐに渡し舟で対岸に渡る。
川にはワニも生息していて、注意看板が立っている。

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整備された木道が森林内を貫く。

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歩道周辺はフタバガキ科の混交林で、大きな板根の巨木も。

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この公園の最大の売り物はなんといっても、石灰岩に空いた大洞窟とそこに生息する15万羽ともいうアナツバメ、それに古代人による壁画だ。

アマツバメの一種のアナツバメの巣は、中華料理の高級食材として重宝される。
歩道途中の地域住民の売店にツバメの巣があった(展示用とか)。

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先住民のイバン族はツバメの巣を食材とはしていなかったようだが、高値で取引されるために数世紀前から採取するようになったという。

アナツバメは、1930年代にはニアの洞窟に150万羽ほど生息していたと推定されているが、現在では過剰採取により15万羽に減少してしまった。

歩道を進み、洞窟に到達したところが、かつてツバメの巣を取引したところ。
1970年代後半まで、この腐りにくく丈夫な鉄木で組まれた櫓に家族で寝泊まりして、採取と取引を行った。

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巣の採取は、鉄木の長いポールで天井の巣を引掛ける。
下にいる人と比べると、ポールの長さ、つまり洞窟の天井の高さがわかる。
重量のある鉄木のポールを操り、目指すツバメの巣を引掛けるのは、なかなかの重労働だ。
実際の採取期間は4月から8月までで、今回のは解説用のパフォーマンス。

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いよいよ、積もり積もったツバメの糞を踏みしめながら、大洞窟の奥穴に入っていく(中央の黒い穴)。

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洞窟内には、歩きやすいように、また石灰岩を損傷しないように、階段と木道が延々と続いている。
それでも濡れた木道は滑りやすいから注意が必要だ。

一歩奥に足を踏み入れると、入口の狭さからは想像できないスケールの空間が広がっていた。

地中の奥深くまで続く大洞窟は、映画『地底大探検』や『インディー・ジョーンズ』のようで、ワクワク・ドキドキする。
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洞窟は、古代人も住居などに利用していたようで、3万年前の頭骨や旧石器時代から新石器時代の各種石器、さらに銅器や鉄器なども発見されている。

大洞窟を抜けて、しばらくの間林内を歩くと、1958年に発見されたペイントケーブ(絵画洞窟)がある。
この洞窟は、墓としても使用されていたようで、舟形の棺桶の残骸も残っていた。

壁画の保護のために網で覆われているが、よく見ると確かに壁画が描かれている。

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壁画の舟らしきものは、インドネシア(スマトラ島ランプン)でもよく織物などの模様となっている霊船のモチーフと似ているようにも思う。

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帰りは、再び大洞窟に戻り別の出口から、もと来た木道を公園ゲートまで帰って、ニア国立公園のメインルート探索は終了する。

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ほかにも、石灰岩の丘に登ったり、先住民イバン族のロングハウスを訪れたりするルートもあるようだ。


ところで近年、インドネシアやマレーシアの農村で、高層ビル群(?)を目にするようになってきた。

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スマトラ島(インドネシア)にて、2009年撮影

最初のうちは、農村人口の増加と所得向上に伴うマンション建築と思っていたが、よく見ると窓がない!

後に聞いたところでは、ツバメの巣採取のためのツバメ用アパートとか。

私たち人間は、エビ、ルワック・コーヒーなどなど、様々なものを養殖したり、栽培したりしてきた。

“食”と“金”への飽くなき追求、執念の結果だろう。

私は食と金にはあまり執着がない。
もっと他に執着したいもの(こと)は、たくさんあるからね。

【本ブログ内関連記事リンク】

サラワク州クチンは猫の町!?

そのエビはどこから? -スマトラ島のマングローブ林から(2)

最高の人生の楽しみ? ルワック・コーヒー

ユーカリに彩られた先住民アボリジニの伝説の地 ダーウィンも立ち寄った世界遺産 -国立公園 人と自然(海外編9)ブルー・マウンテンズ国立公園(オーストラリア)

巨樹との再会に思う


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コメント 6

mimimomo

おはようございます^^
ボルネオもいろんな所があるのですね~こう言う所大好き(^-^♪ 行ってみたいわ。
食と金には執着しないけれど・・・お金がないとなかなか出かけられないですぅ~
by mimimomo (2016-03-20 07:18) 

staka

mimimomoさん
日本の鍾乳洞も素晴らしいけど、スケールの大きなニアの石灰岩洞窟も素敵でしたよ。
by staka (2016-03-20 15:25) 

はなだ雲

「板根」?面白いですね
こんな形の木、見たことないかも^^


by はなだ雲 (2016-03-21 00:00) 

smik

ツバメ巣、ずいぶんと高いところのをとるんですね。ポールの持ち運びだけでも大変そうです。
ツバメ用アパート・・・ ツバメさんたちは住んでくれるのでしょうか
by smik (2016-03-21 20:02) 

staka

はなだ雲さん
板根は、育ち過ぎた巨体の幹を支えるために発達した根です。
意外ですが、熱帯では、気温が高くて落ち葉などの分解が早く、大雨で養分も流れて、土が薄いために根を地中深くまで伸ばすことができません。それで、板根で支えているのですね。
by staka (2016-03-21 20:54) 

staka

smikさん
大洞窟の天井は高くて、巣を取るのも大変そうですね。もっと効率的な方法もありそうですが、乱獲も困りますね。
実は、ツバメのアパートにツバメが出入りしているのは見たことありません(笑)車で通り過ぎるだけからかな?
by staka (2016-03-21 21:01) 

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