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知床五湖 観光客の増加と野生との共生? -国立公園 人と自然(5 追補)知床国立公園 [   国立公園 人と自然]

ご訪問ありがとうございます。道東訪問記が続きます。

世界自然遺産登録から今年(2017年)7月で満12年の知床国立公園(「知床旅情と世界遺産で急増した観光客 -国立公園 人と自然(5) 知床国立公園」参照)。

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今回は、阿寒湖での用務(「阿寒湖の巨樹・巨木林」参照)の後に、知床五湖を訪問した。

知床半島の付け根に位置する斜里の町(斜里駅、斜里漁港)から国道334号を進むと、知床観光の宿泊拠点の一つウトロ(漁港)の手前に、落差50mほどの「オシンコシンの滝」がある。

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原生自然環境保全地域にも指定されている知床半島中央部の遠音別岳(標高1330m)を源流とするチャラッセナイ川にかかる滝だ。
途中から二つに分かれて流れるこの滝は、別名「双美の滝」とも呼ばれている。

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この滝は、道路沿いの駐車場からも近く、知床半島観光客の多くが立ち寄る観光名所ともなっている。

ウトロの町並みを過ぎると、広い駐車場の中の大きな建物「知床世界遺産センター」に到着する。

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知床の世界遺産登録を機に環境省が設置したもので、知床に生息するヒグマやエゾシカなどの動物や自然の様子を模型などで展示していて、世界遺産の見どころなどの情報も提供している。

全国の国立公園にはビジターセンターが設置されているが、世界遺産センターも類似施設といえよう。

日本では、国立公園の利用に先立って、ビジターセンターなどで自然の学習をし、あるいは利用のための情報を得る習慣が根付いているとはまだまだ言い難いが、このような立派な施設をぜひ活用してもらいたいものだ。

知床半島の斜里地区には、このほかにも公益財団法人知床財団が管理運営する「知床自然センター」もある。

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ここでも、自然の展示や案内、レクチャーなどが行われている。また、自然探索のための長靴や双眼鏡などレンタルサービスもある。

知床半島の自然の情報をたっぷり仕込んで、いよいよ知床五湖に向けて出発だ。

約4000年前の知床硫黄山の噴火活動による山体崩落でできた窪地に水が溜まってできた「知床五湖」は、その名のとおり一湖から五湖までの小さな湖(沼)の集まりだ。

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かつては五つの湖を順に自由に巡ることができたが、ヒグマの生息地での世界遺産登録などによる観光客の増加もあり、踏み荒らしによる植生影響、ヒグマと観光客との遭遇などの影響も多発し、安全対策を兼ねて利用者数のコントロール策(入域制限)が図られている。

その一つが、国立公園指定の根拠となっている「自然公園法」に基づく「利用調整地区」の指定だ。
利用調整地区は、原生的な自然地域での立ち入り人数等を調整・制限するための制度で、2002年の法改正により導入された。全国では知床五湖地区が2例目だ。現時点では、この2地区だけ!

知床五湖では2011年から開始された。

なお、知床五湖の先にある人気の観光地、秘湯「カムイワッカ湯の滝」への到達道路は、8月はマイカー規制期間であり、一般自動車の通行は制限されてシャトルバスへの乗り換えが必要となる。
これは自然公園法には基づかないものの、全国各地の国立公園で実施されている利用規制の一つでもある。

さて、知床五湖探索に戻ろう。
従来のように五湖の歩道(地上歩道)を巡るには、ヒグマの活動状況などにより、五湖入口の「知床五湖フィールドハウス」で事前手続きが必要となる時期もある。

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約10分間のレクチャーを受講(料金250円)して少人数ごとに出発が可能な方法・時期と自然ガイドの引率(有料)で探索する方法・時期とがある。
10月末から閉園期までは、手続きなしで地上遊歩道を歩くことができる(無料)。

今回訪問した日は、5月10日から7月31までのヒグマ活動時期に当たり、登録引率者(ガイド)の同行が必須だったが、クマの活動時期でツアー回数も少なく、残念ながら参加できなかった。

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一方、受付手続きも必要なく、無料で探索できるのは、高架木道だ。
一湖までの往復約1.6km、40分の散策だ。

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高架木道に沿って電気柵が張り巡らされており、木道の地上高もあいまって、ヒグマに襲われずに安心して探索できるという仕組みだ。

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世界遺産知床ツアーの団体観光客は街中の観光地のごとく木道を歩いているが、この地がかつては秘境と言われたとは想像もつかない。

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遠景の知床連山を水面に映す一湖の景色は、観光客のお目当ての一つだ。
残念ながら当日は、曇り空の夕刻で、写真としては今一だが。

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知床の鬱蒼とした原生林の野生の世界、岩尾別開拓と開拓跡地での知床100平米運動による植樹、そして世界遺産登録。

この間エゾシカは、樹皮剥離や食草など生態系への影響を与えるまでに個体数を増加した。
知床五湖の高架木道からも、シカの姿を何度も目撃した。

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シカの増加には地球温暖化による冬季の積雪減少などの影響もあるが、天敵エゾオオカミの絶滅の影響も大きい。

地球温暖化にしろ、エゾオオカミの絶滅にしろ、その原因は私たち人間だ。
ということは、現在のエゾシカによる生態系かく乱の元凶は、他ならない私たち人間ということではないだろうか。

野生動物を間近に見る体験は、国立公園訪問の醍醐味でもあり、いつまでも記憶に残ることだろう。

私たちは、国立公園訪問で野生生物の世界を垣間見させてもらっているということだ。

ヒグマにとって、子育てで気が立つ時期に人間と遭遇すれば、襲うのが自然ともいえる。

ヒグマに遭遇しても被害を被る心配のない高架木道は、演出過剰かもしれないが野生動物との共生の一つの姿かもしれない。

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コメント 6

mimimomo

こんにちは^^
知床五湖に高架木道が出来たのですか? 何時のことかしら。わたくしが行ったときはなかったような・・・
安心して見られるならまた行ってみたい所です。
確かに自然の中、高架木道があるのはどうかなっと思わないでもありませんが、やはり有難いですよね^^
エゾオオカミって絶滅したのですか? むむぅーやはり人間が自然(地球?)を荒らしているのでしょうね(__;
by mimimomo (2017-08-05 11:46) 

staka

mimimomoさん
山道はできるだけ自然のままがいいのですが、急峻なところでの階段などは、ありがたいですね。
尾瀬などでの木道は、人間にとっての歩き易さだけでなく、植生の保護にもなります。
それにしても、人間は地球上で多くの生物種を絶滅させてきました。いつかしっぺ返しが来るのでしょうか?
by staka (2017-08-05 14:14) 

JUNKO

ここ数年行っていません。懐かしい光景ばかりです。
by JUNKO (2017-08-05 19:18) 

staka

JUNKOさん
北海道は広いですから、道内にお住まいでもなかなか行けないですよね。
by staka (2017-08-05 23:06) 

smik

夏の知床、行ってみたいですねー。
ちょっと前になりますが、知床五湖がすっかり凍ってる季節に行ったことがあります。ものすごく静かで厳しいところだったと記憶しています。真冬の知床も体力があるうちにもう一度行ってみたいです^^
by smik (2017-08-11 21:28) 

staka

smikさん
冬の知床五湖ですか。
道東に3年ほど住んでいましたけど、冬に五湖まで行ったことはないですね〜
さぞかし素敵でしょうね。
by staka (2017-08-11 21:40) 

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