国立公園と国際紛争 ―国際平和公園(1) [保護地域 -国立公園・世界遺産]
このところ、北朝鮮のミサイルや核実験とその制裁措置のニュースが連日のようにマスコミを賑わしている。
そうでなくとも、過激派組織IS(イスラム国)とイラク軍との戦闘や欧米などでのテロ事件、さらにはアフリカなどで続く民族紛争など、世界では各地で戦闘状態が続いている。
前回のブログ記事では、沖縄の米軍基地に関連して「国際平和公園」について触れた。(「世界遺産への期待と多難な課題 - 国立公園 人と自然(22) やんばる国立公園」)
「国際平和公園」(International Peace Park)は、平和と国際間協調の促進のために設定管理され、国境紛争などの解決への貢献も期待されるものだ。
この原型のひとつとして、ポーランドとスロヴァキアの国境カルパティア山脈に設定されている国立公園がある。
私が訪問したポーランド側のタトラ(Tatra)国立公園は、山岳の町ザコパネを起点とし、ロープウェイも設置されているが、馬車も運行されている。
モルスキー・オコという青く美しい小さな湖などが点在する石灰岩などの山岳地で、大型シカのエルクなども生息している。
稜線部の山道は、ポーランド側とスロヴァキア側を行ったり来たりする。
国境といえども、どこかの大統領のようにフェンスを作ったりしないから、両国をまたがることもできるのだ。
日本では味会うことのできない体験だ。
残念ながら、訪問したのは40年も前で、モルスキー・オコの写真などが見つからない。
見つかったら、後日追加アップの予定。
この地域の国際平和公園(原型)としての設定は、第一次世界大戦にまでさかのぼる。
大戦前には、ポーランドも、チェコも、スロヴァキアも、国としては存在していなかったのだ。
大戦後にポーランドやスロヴァキアなどは独立(建国)したが、その際の国境紛争を解決するためにクラコフ宣言(1924 年)が締結された。
これに基づいて、タトラ国立公園、ピエニンスキ(Pieninsky)国立公園などを両国で共同管理するための連絡協議会が設立されたというわけだ。
当時はまだ、国際平和公園などという呼称はなかったが、まさに今日でいう国際平和公園そのものだ。
その後、1932 年には北アメリカでウォータートン・グレイシャー(Waterton-Glacier)国際平和公園が設定された。
カナダ側のウォータートン湖国立公園と米国側のグレイシャー国立公園を核とした両国の保護地域により構成され、世界で最初の公式な国際平和公園でもある。
1995 年には世界自然遺産にも登録されている。
国際平和公園は、生物多様性や文化資源の保護のために国境を接している国々が協定を結び、国境(または地域)を越えて管理協力するために設立された「国境を越えた保護地域」(Transboundary Protected Area: TBPA)のひとつだ。
山岳の生態系では、往々にして稜線が国境となることが多い。
この国境により、連続的で広範な生態系も分断されてしまう。
いくら良好な自然が保護地域になっていても、それぞれの国ごとに個別の基準で管理され、あるいは一方が保護地域でも他方は保護地域に指定されていないなどの場合もあり、生物多様性保全上は必ずしも十分とはいえない。
そこで登場したのが、「国境を越えた保護地域(TBPA)」だ。
世界では、200カ所以上のTBPAが設定されていて、関係国は100ヵ国以上、TBPAを構成する各国の保護地域数は600を超える。
バルカン半島のアルバニア、ギリシャ、マケドニアの3 国にまたがる二つの淡水湖大プレスパ湖と小プレスパ湖を中心とするプレスパ(Prespa)国際公園は、2000 年に設定された。
私が訪問したのは、アルバニアのプレスパ湖国立公園だ。
対岸はマケドニア。さらにギリシャにも大地は続く。
湖岸には町や農地が広がる。
のんびりとした平和な風景。
バルカン半島は、近年まで紛争の火種の地。
こんなところで戦火が再び起きたらたまらない。
プレスパ湖を日本海に置き換えて考えると・・・・
【本ブログ内関連記事】
ペリカンの棲む湿地と海水浴場の賑わい -国立公園 人と自然(番外編5) ディヴィアカ・カラヴァスタ国立公園(アルバニア)
世界遺産への期待と多難な課題 - 国立公園 人と自然(22) やんばる国立公園
海岸の平和光景と戦争の記憶
対立を超えて -『生物多様性と保護地域の国際関係 対立から共生へ』出版4
そうでなくとも、過激派組織IS(イスラム国)とイラク軍との戦闘や欧米などでのテロ事件、さらにはアフリカなどで続く民族紛争など、世界では各地で戦闘状態が続いている。
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「国際平和公園」(International Peace Park)は、平和と国際間協調の促進のために設定管理され、国境紛争などの解決への貢献も期待されるものだ。
この原型のひとつとして、ポーランドとスロヴァキアの国境カルパティア山脈に設定されている国立公園がある。
私が訪問したポーランド側のタトラ(Tatra)国立公園は、山岳の町ザコパネを起点とし、ロープウェイも設置されているが、馬車も運行されている。
モルスキー・オコという青く美しい小さな湖などが点在する石灰岩などの山岳地で、大型シカのエルクなども生息している。
稜線部の山道は、ポーランド側とスロヴァキア側を行ったり来たりする。
国境といえども、どこかの大統領のようにフェンスを作ったりしないから、両国をまたがることもできるのだ。
日本では味会うことのできない体験だ。
残念ながら、訪問したのは40年も前で、モルスキー・オコの写真などが見つからない。
見つかったら、後日追加アップの予定。
この地域の国際平和公園(原型)としての設定は、第一次世界大戦にまでさかのぼる。
大戦前には、ポーランドも、チェコも、スロヴァキアも、国としては存在していなかったのだ。
大戦後にポーランドやスロヴァキアなどは独立(建国)したが、その際の国境紛争を解決するためにクラコフ宣言(1924 年)が締結された。
これに基づいて、タトラ国立公園、ピエニンスキ(Pieninsky)国立公園などを両国で共同管理するための連絡協議会が設立されたというわけだ。
当時はまだ、国際平和公園などという呼称はなかったが、まさに今日でいう国際平和公園そのものだ。
その後、1932 年には北アメリカでウォータートン・グレイシャー(Waterton-Glacier)国際平和公園が設定された。
カナダ側のウォータートン湖国立公園と米国側のグレイシャー国立公園を核とした両国の保護地域により構成され、世界で最初の公式な国際平和公園でもある。
1995 年には世界自然遺産にも登録されている。
国際平和公園は、生物多様性や文化資源の保護のために国境を接している国々が協定を結び、国境(または地域)を越えて管理協力するために設立された「国境を越えた保護地域」(Transboundary Protected Area: TBPA)のひとつだ。
山岳の生態系では、往々にして稜線が国境となることが多い。
この国境により、連続的で広範な生態系も分断されてしまう。
いくら良好な自然が保護地域になっていても、それぞれの国ごとに個別の基準で管理され、あるいは一方が保護地域でも他方は保護地域に指定されていないなどの場合もあり、生物多様性保全上は必ずしも十分とはいえない。
そこで登場したのが、「国境を越えた保護地域(TBPA)」だ。
世界では、200カ所以上のTBPAが設定されていて、関係国は100ヵ国以上、TBPAを構成する各国の保護地域数は600を超える。
バルカン半島のアルバニア、ギリシャ、マケドニアの3 国にまたがる二つの淡水湖大プレスパ湖と小プレスパ湖を中心とするプレスパ(Prespa)国際公園は、2000 年に設定された。
私が訪問したのは、アルバニアのプレスパ湖国立公園だ。
対岸はマケドニア。さらにギリシャにも大地は続く。
湖岸には町や農地が広がる。
のんびりとした平和な風景。
バルカン半島は、近年まで紛争の火種の地。
こんなところで戦火が再び起きたらたまらない。
プレスパ湖を日本海に置き換えて考えると・・・・
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こんにちは^^
国際平和公園 ? 行ったことないようですね~
ウォータートン・グレイシャーって地図で見てみますと、ロッキー山脈の真ん中?(@@ 自然豊かでしょうね。
こう言う考え方って日本のような島国ではありえないし、今まで考えたことも無かったです。
しかし紛争と言うのは無くならないですね~
by mimimomo (2017-09-16 11:53)
あるでしょうね。バルカン半島と極東地域の類似性というべきか、地政学的国を取り巻く諸条件は酷似していますから。
by U3 (2017-09-17 16:00)
mimimomoさん
ロッキー山脈の国立公園には、カナダ側も米国側も行ったことはありますが、実は私も、ウォータートン・グレイシャー公園そのものには行ったことありません。
同じ英国植民地同士とはいえ、国境問題など紛争もあったようですから、なおさら国際平和公園が必要とされたのでしょうね。
by staka (2017-09-17 17:37)
U3さん
バルカン半島は、何度も紛争の地になっていますね。というか、ヨーロッパ全体で、国の興亡が激しいですよね。
国立公園が少しでも平和に役立つならば、それは素晴らしいことです。
by staka (2017-09-17 17:41)