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全国巨樹・巨木林の会と巨樹調査再考 [巨樹・巨木]

 7月5日に秋田県角館で開催された「全国巨樹・巨木林の会総会」に参加しました。私は、この会の理事も仰せつかっています。全国巨樹・巨木林の会は、いわゆる巨樹(巨木)に関心のある人々や保護活動などに携わる団体などの交流を目的として、1993年に設立されました。総会時には、「巨木を語ろう 全国フォーラム」も併せて開催されています。s-木の根橋.jpg

 一口に巨樹あるいは巨木といっても、そのイメージは人によって様々でしょう。全国には一体どのくらいの巨樹があるのでしょうか。環境省では、1988年に全国の巨樹・巨木林の一斉調査を実施しました。これは、いわゆる「緑の国勢調査」と呼ばれている自然環境保全基礎調査の一環です。その時の担当者が私で、そのご縁で、全国巨樹・巨木林の会の設立にも携わり、理事も務めているというわけです。

 1988年の調査に次いで、2000年にもフォローアップ調査が実施されました。調査対象は、幹周(幹回り)が3m以上のもの、という単純なものです(巨木林は、これらの巨樹がある程度まとまっている樹林)。この結果、全国で6万8千本あまりの巨樹が調査・確認されました。全国一の巨樹は、鹿児島県蒲生町にある「蒲生の大クス」で、幹周は約24.2mです。来年の総会・フォーラムは、この蒲生町で開催されます。有名な縄文杉(屋久島)は、幹周16.1mで12位です。巨樹としては、全国的にはスギが圧倒的に多く、ケヤキ、クスノキ、イチョウというような順番なのですが、太くなる樹種としては、トップ10のうち6本がクスノキです。詳しくは、環境省生物多様性センターや全国巨樹・巨木林の会のホームページをご覧ください。

 ところで、巨樹の定義はあるのでしょうか。私もつい、幹周をもとに巨樹のランキングを書いてしまいました。一般的には、環境省の巨樹の定義として「地上から1.3mの幹周が3m以上の樹木」と言われています。しかし、これはあくまで「調査対象」の樹木であって、巨樹の定義ではありません。巨樹としては、樹高や樹齢もあるでしょうが、これは調査が困難なため、測定しやすい幹周を調査することにしたのです。調査対象として、直感的にもわかりやすいところで、およそ直径で1mというのが出発でした。北と南の地域によっても、樹種によっても、巨樹と呼ばれるものも変わるでしょうから、調査の結果からこれを見極めて保全の資料にしようと考えたわけです。それが、巨樹の定義になってしまったのです。これも、数字が独り歩きをした例でしょう。

 1988年の調査の際には、できるだけ全国で巨樹への関心を高めて、調査情報を得ようと考えました。そこで、太い木が発見されるたびに、地方紙などで発表をしてもらいました。おかげで、巨樹に対する関心は高まったのですが、どうも太さ(幹周)に集中しているようです。調査では当時の緑の国勢調査としては珍しく、地域のシンボルとなっているか、故事・由来があるか、信仰対象となっているか、などのいわば人文的な項目も調べました。これも、人と巨樹との関わりが保存への原動力との思いからです。こちらの方へも関心を向けてもらいたいものです。

 悠久の時を経て、人や地域との関わりの中で生きてきた「巨樹」、そしてそれを通じた人々の輪を今後も大事にしたいと、あらためて思い起こした総会参加でした。

 (写真) 第1回巨木フォーラム(1988年)が開催された兵庫県柏原町(現、丹波市)の「木の根橋」(大ケヤキ)
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