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選挙と生物多様性 [生物多様性]

 世の中は、総選挙の話題でにぎやかだ。この選挙・民主主義と「生物多様性」。ちょっと強引かもしれないけれど、その関係は?

 民主主義の世界では、多数意見が勢力を持ち、これに従うのがルールになっている。「民衆は愚衆だ」との意見も根強いが、とにかく選挙では多数の得票を得た候補者が当選する。このため、時として政党候補者選びや選挙運動自体が人気取りに偏ることも多い。いずれにしろ、多数を占めた勢力が、その政策内容や実際の施策実現はともかくとして、権力を握る。極端な場合には、この権力によって策定された法制度が「悪法も法なり」ということになる。その場合でも、責任は選挙民にある。一方で、仮に多くの支持を得なくとも、軍事力、財力、宗教、血縁などにより強権的に少数が権力を得ることもある。これが独裁だ。

 生物の世界でも、生存競争に打ち勝った種が勢力を伸ばす。植物では、勝った種は優占種として広い面積を占めることも多い。現在問題になっている多くの外来生物(移入種)も、在来種との競争に打ち勝って勢力を広げたものたちだ。しかし、あまりに優占、独占しすぎて、ある日突然滅亡の目に逢うこともある。外来種のセイタカアワダチソウは、根からアレロパシーという植物の発芽成長を阻害する物質を分泌して、他の植物との競争に勝って勢力を広げてきた。しかし、セイタカアワダチソウだけの画一的な世界になると、アレロパシーがセイタカアワダチソウ自身に作用して拡大が阻害されるという。

 生物の世界では、競争もあるが、持ちつ持たれつの助け合いも多い。植物の種子の運搬(拡散)では、鳥や獣も大きな役割を担っている。食物連鎖も、一見弱肉強食の世界のようだが、実は大きな目で見ればお互いに助け合っている世界ともいえる。人間から見て雑草や害虫と言われる生物でも、生態系ではそれぞれの役割もあるのだ。このように、多くの生物によって構成され、それぞれが互いに関係しあって成り立っているのが生物多様性の世界だ。s-生命の宝庫熱帯林0765.jpg

 かつて、途上国の食料問題解決のためにトウモロコシ、小麦、米などの高収量品種が開発され、多くの国で作付けされ、多数の人々を飢餓や栄養失調から救ったことがあった。これは、「緑の革命」として有名で、中心になったボーローグ博士は1970年にノーベル平和賞を受賞したほどだ。 しかし、これらの品種の作付けには、多量の水や肥料、農薬も必要で、環境問題を含めて社会経済上のさまざまな問題も引き起こした。そして、単一作物(モノカルチャー)は、何よりも気候変動(冷害など)や病虫害が起きるとひとたまりもない。大面積が同じ性質の画一的な世界だから、全滅の危機が極端に高くなる。

 18世紀から19世紀にかけて、不毛の地といわれたアイルランドでジャガイモ生産が成功し、ジャガイモが主食となり人口も増加した。しかし、ひとたび疫病の発生でジャガイモが全滅すると、ジャガイモだけに頼っていたアイルランド国民の約10%、100万人以上が餓死し、200万人が国外に移住せざるを得なくなった。世にいう「アイルランドジャガイモ飢饉」だ。この時に米国に渡った多くのアイルランド出身者の中には、後に大統領などを輩出したケネディ家も含まれていた。

  「アイルランドジャガイモ飢饉」のように、単一作物が全滅を引き起こすことは教訓となっているはずだが、現在の日本を含めて多くの国では売れる品種、金がもうかる品種のモノカルチャーだ。これは、農業の世界だけではない。資本主義(金がものをいう)の産業や経済の世界はもちろん、私たちの日常生活の場でも、多くのものやことが画一的になってきた。買い物に行っても、大型店舗が主流で、商品はどこでも同じような多売品しか置いていない。ちょっと流行遅れやマイナーなものは、見つけるのがほとんど不可能だ。ファッションなど流行の世界では、特に日本人は周囲と異なることを極端に恐れるようだ。その挙句、人と同じ格好をし、意見表明など目立つことも恐れ、携帯電話などで誰かと繋がっていないと不安を感じる若者も多い。

 今や地球全体がグローバリゼーションという画一的な世界に進みつつある。画一化、単一化した世界は、滅びるのも早いことを生物多様性の世界が教えてくれている。選挙も含めて、日常社会でさまざまな考えや主義主張、そして生き方が認められるような多様な世界を実現したいものだ。

 (写真) 生命の宝庫 熱帯林(グヌン・ハリムン・サラック国立公園(インドネシア)にて) 
 (関連ブログ記事) 「物質と便利さを求める若者気質と自己表現」 「自然の営みから学ぶ -人と自然の関係を見つめなおして


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