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音楽と騒音と -海外調査から帰国して文化の多様性を考える [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

 8月は、インドネシアとアイルランドでの調査に費やした。いずれも、地方の小さな集落での調査や移動続きのためにインターネットも使用できなくて、「国立公園 人と自然 -ワイ・カンバス国立公園」以外はブログも更新できなかった。帰国後はいつものごとく、たまった用務をこなすので精一杯、おまけに今年はパソコンの調子が悪く、それにかかりっきりで何もできずに何日も経ってしまった。まさに、機械に使われた状態だ。結局、このブログ更新も、海外出張先(韓国・済州島、生物多様性と保護地域に関する国際会議)からだ。

 言い訳はこれくらいにして、海外に出かけるたびに感じるのがお国柄の違いである。これだけグローバル化した時代でも、まだまだお国柄はずいぶん異なる。それがまさに「文化」というものなのだろう。今回感じたことの一つは、「音」に対する感覚の違いだ。

 s-ワナ村の伝統的家並み0360.jpgインドネシア・スマトラ島南部のランプン州東ランプン県のワナ(Wana)という小集落を訪れた時のことだ。夕方に村の中央通りを散策していると、家々からはラジオ放送が大音量で流れてきた。それほどの大きな音にしなくても、十分に聞こえると思うのだが、あたかも各家でラジオの音量を競っているようだ。ひょっとしたら、その音はテレビだったのだろうか。暑さのせいで窓を開け放していることもあるかもしれない。いずれにしろ、今の時代、ラジオやテレビの所有を知らしめたいということもないだろう。そして、とどめはダンドゥット(インドネシアの大衆音楽)が夜中まで大音量で響いていたことだ。テンポの良い音楽に合わせて、皆が踊りだす。こちらのほうは、日本の盆踊りの民謡が夜遅くまで聞こえるのと同様かもしれない。

 北海道での国立公園勤務のころ、一人で林道に入った時には、ヒグマ除けにカーラジオの音量を上げたこともあったが、まさかワナ村ではゾウやトラ除けのためではないだろう。そういえば、子供のころは家の中のラジオの音量を上げて戸外での作業をしていたのを記憶している。まだ、トランジスタラジオ(携帯ラジオ)のない時代だった。

 s-パブでの演奏0815.jpg一方、アイルランドでは、地方のどんなに小さな町にもパブがあるが、そこではアイルランド音楽(アイリッシュ音楽とケルト音楽は、どうも違うらしいが)のライブ(生演奏)がある。しかし、店の前まで行けば音は聞こえるが、町の隅々にまで響くようなことはない。

 翻って、日本はどうだろう。駅から自宅までの間には、いくつものカラオケスナックがある。そのどれもが、これでもかというほどのボリュームを上げて、自分だけが酔いしれている歌声を外に垂れ流している。先日行った新橋の駅前では、広場をはさんで大画面のスクリーンが、やはり大音量で競い合っていた。渋谷や他の盛り場でも同じだ。

 駅では、電車の到着や発車などに合わせて、注意喚起のアナウンスがひっきりなしに流される。一つのホームで、上り・下りの両方のアナウンスが同時に流れるのだからたまらない。海外では、静かに発車することも多い。気をつけないと、出発に気がつかないこともある。車内での案内や注意のアナウンスも同様に、日本では細やかだ。また、ショッピングセンターなどでのエスカレーターの注意も、実に念が入っている。ベルトにつかまるように、ベルトから乗り出さないように、足もとの枠からはみ出ないように、子供は手をつないで中央に・・・・・。乗り換えのオランダ・アムステルダムのスキポール空港でも、動く歩道の最後には足元に気をつけるようにとのアナウンスが流れていた。アイルランドのダブリン空港では無音だったのと対照的だ。

 障害のある方々には、ある程度の注意喚起のためのお知らせは必要だろう。しかし、今日の日本の注意喚起アナウンスは、事故が起きるたびにエスカレートし、責任回避に過ぎないようなものも多い気がする。また、否応なしに耳に飛び込んでくる「音楽」も、発信者には理由があっても受け手には苦痛な「騒音」となることも多い。親切が迷惑にならないようにしたいものだ。

 (写真・上) 伝統的集落の家並み(インドネシア・ランプン州ワナWana村にて)
 (写真・下) 小さな村のパブでの演奏(アイルランド・ティペラリーTipperary郡テリーグラスTerryglass村にて)

 (関連ブログ記事)「国立公園 人と自然(番外編1)-ワイ・カンバス国立公園」 「インドネシアから帰国 -時は流れる」 「繋がる時空、隔絶した時空 -インターネット、携帯電話考」 「バルト海の小島でワークショップ」 「モンゴルの風に吹かれて」 「選挙と生物多様性


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