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チェジュ(済州)島とアラン諸島を結ぶもの [ちょっとこだわる:民俗・文化・紀行・時事など]

 韓国チェジュ島(済州島)の家屋と畑を仕切る石垣の風景は、アイルランドのアラン諸島とそっくりだった。

 9月には韓国のチェジュ島に出張した。生物多様性保全のために自然保護地域はいかにあるべきか、についての東アジア専門家会合出席のためだ(内容は別途報告したい)。

 チェジュ島は、韓国テレビドラマの撮影現場にもなっていて、韓流スターファンの日本人観光客も多い。火山地形などが、世界遺産にも登録されている。しかし、この8日間の滞在中は、食事も会議参加者と一緒で、朝から晩までホテルに缶詰だった。それでもなんとか、会議プログラムのエクスカーション(途中1日)と空港出発までの間とで、島内を巡ることができた。s-チェジュ島建物1348.jpg

  城邑(ソヌブ)という伝統的な集落を訪れた。かつては、島内どこでも普通に見ることができたにちがいない。しかし、今や数少なくなった伝統的集落には、維持のために政府によって補助金が支給されている。その代わりに家の改修などは制限され、民俗村として無料開放して、解説までしてくれる(これが補助の条件らしい)。

 そこで見た建物の構造に驚いた。なんと、アイルランドのアラン諸島の建物とそっくりなのだ。

 強い風を避けるために建物の高さは低い。それも壁は石積みで、窓は小さい。さらに、藁葺きの屋根が飛ばされないように、藁縄で縛り付けている。畑も作物を風から護るために石垣で囲まれている。アラン諸島でも、石積みの家の茅葺き屋根は、ロープでしっかり固定されていた。牧草地も石垣で仕切られていた。ともに強風に悩まされてきた島の知恵なのだろう。そして、土地は痩せて、掘っても掘っても、石ころばかりというのも共通している。玄武岩と石灰岩の違いはあるが、掘り上げた石を積み上げているのだ。

 チェジュ島では米は採れなかったために、粟が栽培されてきた。アラン諸島を含むコネマラ地方でも、小麦の代わりにジャガイモが栽培されて、大飢饉をもたらした。また、島だから当然かもしれないが、ともに漁業が中心だ。チェジュ島では特に海女が有名だ。潜ってウニなどを採っているが、最近では後継者不足の日本まで出稼ぎにも行っているらしい。アラン諸島も、漁師の島だ。日本でも有名な独特の編み柄(アラン織)のニットセーターは、ここが故郷だ。このアランニットは、防寒性と防水性に優れ、代表的なフィッシャーマンズセーターといわれている。s-アラン諸島建物0975.jpg

 チェジュ島とアラン諸島、ともに西洋と東洋の端の小島。短期訪問の観光客のまなざしからではあるが、地形・地質も、伝統も、文化も、大きく違うにも関わらず、不思議と共通点がある両島。不況に加え、いがみ合いや戦争などが続く世界の今日この頃。今年の夏は、洋の東西で人類の共通性を感じさせる小さな発見をして、何となく嬉しくなった。

 (写真上) 済州島の伝統的家屋(韓国・済州島城邑民俗村にて)
 (写真下) アラン諸島の伝統的建物(現在では、小屋くらいしか残っていない)(アイルランド・アラン諸島のイニシュモア(Inishmore)島にて)

 (関連ブログ記事) 「音楽と騒音 -海外調査から帰国して文化の多様性を考える」「バルト海の小島でワークショップ」「選挙と生物多様性


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