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あなたは何派? -キャンプ場での自然ふれあい [自然の中での余暇と癒し]

 うっとうしい梅雨の最中だが、早くも梅雨明け後のキャンプ計画を練っている方も多いだろう。計画を立てている間も、すでに旅行やレクリエーションの楽しみが始まっている。もっとも、その計画を立てるのが面倒で嫌いだという人も多いに違いないが。

 今回のブログの話題の「何派?」は、計画を立てるときではなく、キャンプ場利用の際に、自然とのふれあいを目的としているかどうかだ。キャンプは自然の中で行うものであり、当然のこと自然とのふれあいを求めている、と多くの人が考えるだろう。確かにそのとおりではあるが、私の調査研究の結果では、キャンプの目的意識やキャンプ場での行動などから、3タイプに分類され、必ずしも自然とのふれあい志向が高い利用者ばかりとは限らない、という結論になった。また、子ども連れの利用者の方が、子どもを同伴しない利用者よりも、自然とのふれあいや不便さを志向する割合が高いことも判明した。

 s-箱根ロッジ0296.jpg調査は、箱根の神奈川県立「芦ノ湖キャンプ村」の利用者を対象に実施した。富士箱根伊豆国立公園箱根地域は、古くからの温泉や関所、神社、美術館などの文化施設、さらにはゴルフ場、寮・保養所なども多く、首都圏からの交通アクセスも便利なこともあり、わが国の国立公園でも利用者のもっとも多い地域だ。キャンプ村には、ベッド室とリビングダイニングの2LDKタイプで、バス、トイレのほか、ダイニングにはカウンターキッチンが備えられ、食器や炊飯器なども完備しているテラス付木造ログハウス風のケビンが36棟ある。また、キャンピングカーあるいはテント利用のために野外炉(かまど)や電源コンセントも付帯しているオートキャンプ場と、利用者がそれぞれ各自でテントを持ち込むフリーテントサイトがある。

 利用者へのアンケート調査でキャンプ場利用者の自然とのふれあいの場としての利用実態を把握した結果、(A)自然志向が強く、自然体験のために来訪する利用者(自然ふれあいタイプ)、(B)キャンプ活動自体に関心のある利用者(キャンプ活動タイプ)、(C)グループ内での親睦を図ることを目的とする利用者(グループ親睦タイプ)、の3タイプの存在が明らかになった。この結論に至るには、アンケート結果を統計的に解析処理したが、その詳細は拙論文「自然体験の場としてのキャンプ場利用者の意識と行動」(共栄大学研究論集10,pp.265-285,2012年)を参照されたい。

 世界各地の国立公園などで、大自然の中でのんびりと長期休暇を過ごしている家族などを見てきた私は、日本人がなぜ自然の中でのんびり過ごすような行動がとれないのか不思議に思っていた。今回の調査で明らかになったのは、必ずしも自然の中でキャンプなどで過ごすことが嫌いなわけではないが、のんびりするだけの時間的な余裕がないことだ。夏休み期間を中心とした調査だったが、箱根での滞在は平均で2.3日、キャンプ村での宿泊は70%近くが1泊だけだった。夕方に到着して夕飯、翌日は朝早くから次の目的地に出発。これでは、のんびりと自然にふれあえるはずがない。バーベキューなどのキャンプ活動そのものや、家族や知人と楽しむ親睦をキャンプ村利用の目的とする利用者が多くなるのもうなづける。

 s-キャンピングカー0164.jpg一方で、欧米人家族のキャンプ村利用者の多くは、比較的遅い時間帯での朝食後、子どもたちは湖岸や樹林内で水遊びや虫取りなどに戯れ、夫婦はケビンのベランダでゆったりと周囲の自然を眺めてコーヒーを飲みながら、会話あるいは読書で1日を終えて、再び家族揃ってケビンで夕食をとるという。そんな欧米人利用者の姿を見ていると、そもそも3タイプの利用者分類など意味がないようにも思えてくる。キャンプの目的は、バーベキューなど非日常のキャンプ生活を楽しみながらの、自然とのふれあいでもあり、家族との親睦でもあるのだ。

 またまた、のんびり生活の薦めを説いている当の私は、昨日、一昨日の土日も学会に出席していて、休日のない生活をしてしまった。これでは当分、自然ふれあいタイプの仲間入りは難しい?

 (写真上)芦ノ湖キャンプ村ロッジ
 (写真下)大自然の中でのキャンプ(ヨーホー国立公園(世界遺産)(カナダ)にて)

 (関連ブログ記事)
 「自然と癒し -日本人は自然の中でのんびりと過ごせるか
 「アルバニアのんびりカフェ
 「繋がる時空、隔絶した時空 -携帯電話・インターネット考
 「モンゴルの風に吹かれて
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smik

まれにキャンプ場に泊まることがありますが、たいていな近くに条件にあう宿がなかったときです。

日本の山や海の近くにも長期滞在向けの素泊まり、自炊可な宿がもっとあったらいいのにと思います。家族やグループじゃなくても泊まれるようなとこ。

テントや寝袋を背負っていくのは面倒だけど、一泊二食つきのお宿で大量の夕食を出されるのもたまらない。

屋根と布団があり、静かに長期滞在できる宿を見つけられたら、夏の休暇中、そこにいてもいいなぁと思うのです。

これは3タイプ以外の少数派意見になるのでしょうね。


by smik (2012-06-19 21:13) 

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