原始の自然と伝統文化の島々 世界遺産への再挑戦 -国立公園 人と自然(24) 西表石垣国立公園(その2)サンゴ礁と伝統的家並み 竹冨島 [ 国立公園 人と自然]
前回に続き、西表石垣国立公園の2回目。
石垣島と西表島の間は、「石西礁湖(せきせいしょうこ)」と呼ばれるわが国最大のサンゴ礁海域だ。
その海域には、竹冨島、黒島、小浜島、新城島(パナリ島)など隆起サンゴ礁の島が点在している。
竹冨島、黒島、小浜島には石垣島の石垣港から定期船が出ているが、人気のダイビングやシュノーケルのツアーのためのクルーズ船も盛んだ。
ここのサンゴ礁とその間を縫う熱帯魚の海中景観は世界で一番美しいと評するダイバーが多い。
これら海中景観などを保全するために、現在23か所の「海域公園地区」が指定されている。
私たちが目にするカラフルなサンゴは、イソギンチャクなどに近いサンゴ虫(動物)で、中には褐虫藻という藻類(植物)と共生しているものもある。
藻類と共生しているサンゴは、造礁サンゴとも呼ばれ、この地域の島々の骨格を形成してきたものだ。
また、植物との共生だから、光合成に伴う二酸化炭素の吸収と酸素供給も行い、熱帯雨林などとともに、地球温暖化防止や生物生存のためにも重要な役割を果たしている。
しかし残念ながら近年では、まるで骨が海底に散乱しているような、色のない異様な光景が広がっている。これは、サンゴが死滅したものだ。
かつては、陸上からの赤土の流入やオニヒトデによるサンゴの死滅が多かった。
しかし最近の死滅は、地球温暖化に伴う海水温の上昇によるもので、白化現象(ブリーチング)と呼ばれ、グレート・バリア・リーフ(オーストラリア:世界遺産)など世界中に広まっている。
白化現象によって海底に散らばるサンゴの残骸は、まさに生命のない世界だ。
それでも、ところどころには熱帯魚が泳ぎ、新たなサンゴ再生も見ることができる。
「星砂」として知られる星形をした小さな粒は、有孔虫の殻だ。
単細胞生物だが、サンゴと同様に炭酸カルシウムで殻を形成して炭素固定も行い、また藻類と共生しているものもあって光合成で酸素を供給するなど、まさにサンゴ礁と同じく私たちの生命の基盤ともなっている。
竹冨島では、「カイジ浜」が星砂の浜として有名だ。
サンゴの石積み、赤瓦と白い漆喰の家並みが美しい竹富島は、沖縄県では初の国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
しかし現在では、観光客が多くなり、戸に鍵をかけないですむ生活も少しずつ変化してきているという。
動植物も人間も、外部から入ってきたものによってそれまでの生活の変化を余儀なくされているのだ。
それでも竹富島では、夕方ともなればどこからともなく三線(蛇皮線)の音が聞こえてきそうな雰囲気がまだ残っている。
いや、雰囲気だけではなく、実際に三線ののどかな音色が聞こえてくる。
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その海域には、竹冨島、黒島、小浜島、新城島(パナリ島)など隆起サンゴ礁の島が点在している。
竹冨島、黒島、小浜島には石垣島の石垣港から定期船が出ているが、人気のダイビングやシュノーケルのツアーのためのクルーズ船も盛んだ。
ここのサンゴ礁とその間を縫う熱帯魚の海中景観は世界で一番美しいと評するダイバーが多い。
これら海中景観などを保全するために、現在23か所の「海域公園地区」が指定されている。
私たちが目にするカラフルなサンゴは、イソギンチャクなどに近いサンゴ虫(動物)で、中には褐虫藻という藻類(植物)と共生しているものもある。
藻類と共生しているサンゴは、造礁サンゴとも呼ばれ、この地域の島々の骨格を形成してきたものだ。
また、植物との共生だから、光合成に伴う二酸化炭素の吸収と酸素供給も行い、熱帯雨林などとともに、地球温暖化防止や生物生存のためにも重要な役割を果たしている。
しかし残念ながら近年では、まるで骨が海底に散乱しているような、色のない異様な光景が広がっている。これは、サンゴが死滅したものだ。
かつては、陸上からの赤土の流入やオニヒトデによるサンゴの死滅が多かった。
しかし最近の死滅は、地球温暖化に伴う海水温の上昇によるもので、白化現象(ブリーチング)と呼ばれ、グレート・バリア・リーフ(オーストラリア:世界遺産)など世界中に広まっている。
白化現象によって海底に散らばるサンゴの残骸は、まさに生命のない世界だ。
それでも、ところどころには熱帯魚が泳ぎ、新たなサンゴ再生も見ることができる。
「星砂」として知られる星形をした小さな粒は、有孔虫の殻だ。
単細胞生物だが、サンゴと同様に炭酸カルシウムで殻を形成して炭素固定も行い、また藻類と共生しているものもあって光合成で酸素を供給するなど、まさにサンゴ礁と同じく私たちの生命の基盤ともなっている。
竹冨島では、「カイジ浜」が星砂の浜として有名だ。
サンゴの石積み、赤瓦と白い漆喰の家並みが美しい竹富島は、沖縄県では初の国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
しかし現在では、観光客が多くなり、戸に鍵をかけないですむ生活も少しずつ変化してきているという。
動植物も人間も、外部から入ってきたものによってそれまでの生活の変化を余儀なくされているのだ。
それでも竹富島では、夕方ともなればどこからともなく三線(蛇皮線)の音が聞こえてきそうな雰囲気がまだ残っている。
いや、雰囲気だけではなく、実際に三線ののどかな音色が聞こえてくる。
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原始の自然と伝統文化の島々 世界遺産への再挑戦 -国立公園 人と自然(24) 西表石垣国立公園(その1)ヤマネコとの対立から共存へ 西表島 [ 国立公園 人と自然]
6月初旬、数十年ぶりに石垣島、西表島、竹富島を訪問した。
西表石垣国立公園は、わが国最西南端の国立公園で、その中心の西表島は、南西諸島では沖縄本島に次いで大きな島で、鹿児島から約1200km、沖縄本島からでも約430kmの距離だ。
むしろ台湾の方が近い。緯度も台湾、小笠原硫黄列島、ハワイ諸島などとほぼ同じだ。
国立公園には、西表島のほか、石垣島や竹富島、黒島、新城島などの島々が含まれる。
西表石垣国立公園は、わが国最西南端の国立公園で、その中心の西表島は、南西諸島では沖縄本島に次いで大きな島で、鹿児島から約1200km、沖縄本島からでも約430kmの距離だ。
むしろ台湾の方が近い。緯度も台湾、小笠原硫黄列島、ハワイ諸島などとほぼ同じだ。
国立公園には、西表島のほか、石垣島や竹富島、黒島、新城島などの島々が含まれる。
1972年4月に琉球政府による西表政府立公園として指定されていたが、復帰に伴い同年5月に「西表国立公園」として指定されたものだ。
その後2007年に、石垣島の編入により、名称も現在の「西表石垣国立公園」となった(石垣島編入の経緯などは別記事で)。
西表島には、タブ、オキナワウラジロガシ、マングローブやサキシマスオウノキなどの亜熱帯性植物が生育している。
「マングローブ」は、メヒルギ、オヒルギなど海水の入り混じる河口などに生育する樹木の総称で、西表島のマングローブ林は6種の樹種からなっている。
特に、西表島の浦内川や仲間川、後良川などの河口を中心に広がるマングローブ林は、国内最大級だ。
浦内川と仲間川では、マングローブ林観察などの遊覧船も就航している。
以前の訪問時には浦内川を遡り、マリユドゥの滝まで行ったこともあるが、今回は時間がなくて行くことができなかったので写真もない(前回の写真が見つかったらアップ)。
今回は仲間川の遊覧船。
満潮時には、マングローブの樹々は根元がすっかり海水(汽水)に浸かっている。
塩分の濃い水分を吸収しているが、その塩分は特定の葉に集中させ、落ち葉として体外(樹木外)に排出している。
川面にはこの落ち葉が、黄色い帯となって漂っている。
仲間川の上流には、板根(ばんこん)を有することで有名な樹齢約400年といわれるサキシマスオウノキが生育している。
干潮時などには水深が浅くなって、ここまではたどり着くことができないという。
途中の川の中でも生育しているのを見ることができるが、上流のような迫力はない。
熱帯林では多数の板根を有する樹木を見ることができるが、日本で自生しているのは少ない。
古見のサキシマスオウノキ群落は、天然記念物に指定されている。石垣島や奄美大島でも生育している。
はるかかなたの山中には、ヤエヤマヤシの群落も見ることができる。
西表島にはまた、イリオモテヤマネコ、カンムリワシ、リュウキュウカラスバト、セマルハコガメなどの貴重な動物も生息している。
道路の側溝は通常のU字溝ではなく、セマルハコガメなどが落ち込んでも脱出できるように、山側に緩傾斜の形式(レ字型?)となっている。
世界でここだけにしか生息していないイリオモテヤマネコは、1960年代になって初めてその存在が確認され、「20世紀最大の発見」とも言われたほどだ。
昔から地元の住民は「ヤママヤー」とか「ヤマピカリャー」と呼んで、家ネコとは違う猫の存在に気づいてはいた。琉球大学の高良鉄夫教授らは住民から標本となる毛皮などを集めていたが、沖縄では新種かどうかの確認(同定)はできなかった。
ちょうどその頃、噂の山猫の取材で西表を訪れた動物作家の戸川幸夫も、頭骨と毛皮を入手した。高良から託された毛皮と独自入手の頭骨などを東京に持ち帰った戸川は、国立科学博物館の今泉吉典博士に鑑定を依頼した。
その結果、1965年には今泉により新種と鑑定され、67年に正式に新種として学会報告された。
かつて西表島では、「人かネコか」の論争があった。1973年に現地調査した西ドイツ(当時)のライハウゼン教授が世界的に貴重なイリオモテヤマネコの保護のためには、その必要性を十分認識していない住民を島から外部に移住すべきだという考えを持った。
ライハウゼンは、自分の意見を日本の天皇に直訴したく、WWF総裁のイギリスのエジンバラ公にその書簡を送った。それが公になり、地元の猛反発を受けることになった。
地元の住民も、琉球王朝時代や日本軍政時代にかつてマラリア汚染地帯の島に強制移住させられて大変な犠牲を強いられてきた人々だ。
イリオモテヤマネコも、交通事故や家ネコとの競合、ネコウイルスによって絶滅の危機にあり、環境省の調査では100頭ほどしか生息していないと推定されている。
かつて訪れた頃には、子どもたちが沖縄本島や本土などに行った際に困らないようにと、交通ルール教育のためにわざわざ1か所だけ設置されていた信号機も、現在の西表島では観光客のレンタカーも増えて必要不可欠な設備となった。
写真は、日本最西端の信号機?
イリオモテヤマネコは、現在では西表島のシンボルとして、橋の欄干や観光バスのマークとしても目にする。
全国各地で、イノシシやシカ、サルなど野生動物による農業被害などが問題になっているが、野生との対立ではなく、共に棲む、共生の世界が広がるように工夫していきたいものだ。
西表石垣国立公園
1972年5月指定
2007年8月名称変更
面積40,653㌶(陸域)
沖縄県
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